Yakushima Time

吉利博行さん/屋久島焼 新八野窯・陶芸家

車の窓を開けると、暖かい風が吹いている。

県道沿いに立つ看板の横道を、山手に向かって上がっていくと、小さな野花に囲まれた「新八野窯」が見えてきた。

吉利博行さん/屋久島焼 新八野窯・陶芸家

ご主人の吉利博行さんは、1972年に東京から移住し窯を開いた。今年で44年目と聞くと長い歳月を感じるが、

「屋久島はもともと畑を掘ると縄文土器がごろごろ出てくるような島ですから、その歴史からみたらほんの一瞬の時間です」

穏やか声で吉利さんがそう語ると、島の大きな時間軸を感じた。

吉利博行さん/屋久島焼 新八野窯・陶芸家

東京で美術系の大学に通っていた吉利さん。移住を決めたきっかけは、町で拾った新聞に屋久島の別荘管理の求人情報を見つけたことだった。

当時は70年代学生運動が盛んな時期で街中に“どう生きようか”と模索する人たちが溢れかえっていた。吉利さんもその一人だったが、南の離島である屋久島で楽しく暮らすことへの期待に胸が膨らんだという。

ちょうどその頃、屋久島ではこれまでにない新しいものづくりとして“やきもの作り”の動きがあり、合流することになった。

「新八野窯」は、干潮時のみ海岸に現れる“平内海中温泉”で有名な平内集落にある。

店内に入ると、所狭しと並ぶ焼き物。まさに屋久島の自然のように、色鮮やかだ。土の素朴な色の焼き物達と一緒に、カラフルで綺麗な色の器が並ぶ。

吉利博行さん/屋久島焼 新八野窯・陶芸家

吉利博行さん/屋久島焼 新八野窯・陶芸家

これは、海に打ち上げられた珊瑚を焼いて石灰質になったものを釉薬の中に使うことで、ブルーやグリーンが鮮やかに発色するという手法。自然が醸し出す独特の色を焼き物で活かせないだろうかと試行錯誤してきたものだ。

吉利博行さん/屋久島焼 新八野窯・陶芸家

そんな吉利さんは、仕事とは別に毎日思いついたものを小さな陶板の上に作る“陶日記”と呼ばれる小さなオブジェを作っている。「それをいつか皆さんに見ていただきたい」。吉利さんが日々を丁寧に積み重ねた証が、白い陶板の上に刻まれている。

(取材:Written by 散歩亭 緒方麗)

屋久島焼・新八野窯
住所 〒891-4406 鹿児島県熊毛郡屋久島町平内630-4
電話番号 0997-47-2624
ホームページ http://yakushimayaki.com/
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