Yakushima Time

田中啓介さん/くんせい屋けい水産 

バックパッカーが魅せられた屋久島-

安房集落を抜けて南へ車を走らせる。山側に広がる青空をめがけ、小さな看板「さかなくんせい」に沿って坂道を上ると、細い煙の立つ白い建物が見えてきた。

田中啓介さん/くんせい屋けい水産 

「くんせい屋 けい水産」の田中啓介さん。

屋久島へは20年前に移住。それまではバックパッカーとして世界中を旅していたが、海外で日本のことを何も知らない自分に気付かされ帰国。その後、日本を知るための旅の途中に立ち寄ったのが屋久島だったという。
田中啓介さん/くんせい屋けい水産 

「飽きるまで住んでみよう」と、ほんの成り行きで住み始めたというが、島をどんどん好きになっていった。
そんな田中さん、移住当時は漁師をしていた。「屋久島の大自然をバックに大海原で魚を追いかける生活は最高でした」と語るが、自然相手のため安定しない収入と、せっかく獲ってきた魚なのに傷が理由で商品化できずに魚の命を粗末にしてしまう現状をどうにかしたいと、移住から8年後に「くんせい屋 けい水産」を立ち上げた。

漁師から、燻製屋へ-こだわりは?

“けい水産”の燻製は“しっとり生ハム風”。あめ色に燻された外見とはうらはらに、ひとくち食べると口の中で溶けるようなしっとりとした食感に驚かされる。しかも、半生風であるにもかかわらず魚の生臭さは一切ない。
それもそのはず、けい水産では、近くの安房港で水揚げされたばかりの新鮮な魚をその日のうちに加工。燻製前の魚の余分な水分を落とす作業では、天日干しではなく高機能の脱水シート“ピチット”を使用し、温度管理された冷蔵庫の中で約5日間かけて脱水する。こうすることで、雨の多い屋久島でも天候に左右されず、鮮度をキープしたまま魚の旨味だけが凝縮される。そして最後の燻しに使われる桜の木も屋久島で育ったもの。こうして自然の恵みを一身に受けた商品が店頭に並ぶ。

「素材がいいと余計な味付けはいらないですね。シンプルが一番旨い!」と、笑顔で話す田中さん。漁師として誰かに使われながら魚と触れ合っていたときに比べ、くんせい屋として独立し「生き方」が変わったと語る。“生業”という言葉通り、生きていくために自然の命を丁寧に扱い、新しく生まれ変わらせるという業を屋久島で掴んだのだろう。

くんせい屋けい水産

くんせい各種¥500~

(取材:Written by 散歩亭 緒方麗)

くんせい屋 けい水産
住所 鹿児島県熊毛郡屋久島町安房2407-239
電話番号 0997-46-3797
ホームページ http://www.keisuisan.com
営業時間 9時~18時まで(火曜定休)
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