Yakushima Time

高田裕子/画家

屋久島の南、平内集落。
県道を横切る小川沿いの道を歩くと、小さな白い一軒家が現れる。「しずくギャラリー」。

壁にかけてある絵とともに、静かにたたずんでいたのは、画家の高田裕子さん。
パツン、と切り揃えた前髪とレトロなワンピース、そして足元は踵の高い靴。
まるでアートブックから抜け出たような高田さんの世界観は、作品に触れるよりも先に、本人から滲み出ている。

「自然の一部になりたい」。
高田さんは、2006年11月に島を訪れてから、ずっと自然の美しさを描いている。

それまでも自然をモチーフに作品をつくってはいたが、想像の中からひっぱり出していたものだった。しかし初めて屋久島を訪れ、自然に触れた時「こんな場所が実在するんだ…」と、動揺に近い驚きを覚えたという。

「そんな場所に出会えたことは絵描きにとって、とても幸せなこと」
屋久島の森は、驚くほど多様な植物が存在しています。苔の種類だけでも、600種類ぐらいあるんです。できれば全部、描きたいぐらい」
はにかみながら話す横顔とは裏腹に、作品と向き合う眼差しは真剣そのもの。
繊細な筆遣い。ひとつずつ色をのせるごとに、数種類もの緑が重なっていく。
白いキャンバスの中に屋久島の森が広がり、鮮やかな命が芽生えていた。

始めから芸術の道に入ったわけでは、なかった。
小さい頃から、絵が好きでたまらなかった。だから・・・高校に入った時は、あえて美術を選択しなかった。でも、すぐ後悔した。3年生になると、画家になることを決意していた。

屋久島の絵を描き始めた時は、それまで応援してくれていた人たちに受け入れられるか不安だった。
自分にとっては大きな方向転換だった。

そんなとき、「やっと見つけたんだね」と声をかけてもらえた。
高田さんにとって、作品を好きになって、身近においてもらえることが一番の喜びだ。

「絵は、自分のかけらみたいなもの。これまでの時間が、全て詰まっているんです。だから誰かに気に入ってもらえると、自分のそれまで歩んできた人生を肯定された気持ちになります」

森の中には、数千年を超える“木”のような大きな存在もいれば、苔のように小さいけれど、たくさんの命を感じさせる存在もいる。
”森”というひとつの有機体を細かく描き続けることで、人類という地球上の小さい存在も、近づけるような気がする。

森に囲まれた白いギャラリーは、もう自然の一部になっている。

(取材:緒方麗)

高田裕子/画家
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