日高ユカリさん/セラ美容室

みんなの手に支えられて。商店街の中にある小さな美容室

安房集落の商店街の中にある「セラ美容室」。美容師の日高ユカリさんがこの美容室をオープンさせてから今年で10年目になる。玄関の窓からは、いつもお客さま相手に談笑する日高さんの姿が覗く。大きな声でテンポ良く会話を交わす日高さんに元気をもらおうと、訪れるお客様は子供から大人まで年齢はさまざま。かつてはシャッター通りだった商店街に、笑顔の花が咲いている。

日高ユカリさん/セラ美容室

そんな日高さんが美容師になろうと思ったきっかけは、1人でも多くの人を綺麗にしてあげたい、という思いからだったという。特に自分に自信の無いお客様やコンプレックスを抱えているお客様を目の前にすると俄然やる気が沸いてくる、と語る日高さん。その理由を聞いてみると、いつも明るい日高さんから意外な答えが返ってきた。

「実は昔、容姿のことでからかわれた事がありました。それ以来、自分に自信が持てなくなったんです。でもそんな経験をしたからこそ、同じように自信の持てない人を、私の手で綺麗にしてあげたいと思うようになりました」

日高ユカリさん/セラ美容室

日高さんは、屋久島高校卒業後、鹿児島県内の美容師専門学校に入学。その後、県内の美容室へ就職したが、仕事のストレスで体調を崩すことも少なくなかった。その度に故郷の屋久島へ帰り、島の自然に癒されては、また仕事へ戻ることを繰り返していたという。

「島に帰り、ただぼーっと自然を見ているだけで涙が出てきました。自然が綺麗だなと感じる余裕もなく、ただ自然の中に身を置いているだけで、また頑張れる気持ちになれたんです」

お客様の人生を大切にしたい

その後、仕事を辞めたのをきっかけに、ほんの一時帰省のつもりで帰島したが、周りの後押しもあり馴染みの安房商店街で開業することになった。ご両親を早くに亡くし、親戚に育てられた日高さんは、年老いていく育ての親に寄り添っていたい、との思いもあったという。

日高ユカリさん/セラ美容室

「私は周りに恵まれています。両親は早くに亡くしましたが、親戚や近所の人たちがいつも声をかけてくれて、ときには真剣に叱ってくれました」

日高さんは年に数回、高齢者介護施設などでボランティアカットを行っている。寝たきりの高齢者の髪を整えることも多く、美容師にとってベストな体勢で切ることが難しいのだが、日高さんはそれ以上の学びがあると語る。

「例えば”手”には家族を象徴するようなイメージがあるなと感じるのですが、御家族の関わりはその方々の”手”に現れているような気がします。目の前の高齢者の方は、私にとってはただのお客様かもしれませんが、御家族にとってはかけがえのないお父さんやお母さん。だから、お客様のこれまでの人生を大切にしたい、と思いながらハサミを持っています」

日高ユカリさん/セラ美容室

セラ美容室の”セラ”は、日高さんを娘のように育ててくれた叔父さんの名前をつけたという。ふと、ハサミを持つ日高さんの手に目をやると、少し荒れながらもふっくらとした温もりを感じた。

(取材:Written by 散歩亭 緒方麗)

セラ美容室

  • 鹿児島県熊毛郡屋久島町安房87
  • 080-5605-6593

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