久保太さん/久保養蜂園 屋久島ファーム

小さな瓶の中にぎゅっと詰まった、屋久島の多様な植物の恵みー濃厚だけどさっぱりとした味わいの蜂蜜。

シャリンバイ、アカメガシワ、カラスザンショウ、タンカン、アブラギリ。
スプーンから落ちる黄金の滴は、屋久島の大自然が育む芳醇な植物の味がする。

タンカンやポンカンなどのみかん畑に囲まれた静かな農地の一角に、養蜂箱が整然と並んでいる。背後には山々が連なり、周りは豊富な雨によって大きく育った植物が生い茂る。“久保養蜂園屋久島ファーム”の久保太さんが手がけるハチミツは、こんな場所で作られている。

「自分で作ったハチミツが一番美味い!」

そう語る久保さんが手がけるハチミツは、非加熱の純正生ハチミツ。熱を加えないため蜂が集めた植物の味をそのまま味わうことができるという。植物の花の蜜を体内に取り込み、蜂の持つ酵素と合わさることで、蜂蜜がつくられる。生き物が作るものだからこそ、同じ植物でも時期や環境が違えば蜜の味も変わってくるという。なんと、同じ敷地に置かれた巣箱のひとつ隣というだけでも、その味は全く変わるというから驚きだ。まさに自然そのものの繊細な味が、個性豊かに小さな瓶の中に凝縮されている。

「同じ味はひとつとしてないんですよ。その場所その箱のオリジナルの蜂蜜ができあがる。これが養蜂のすごく面白いところだと思います」

屋久島の豊かさは、人生の喜びに繋がる

実は久保さんは、養蜂家になる前は島内の焼酎会社に勤務していた。そこで杜氏として働いていた奥様の律さんが、退社を機に”身体を元気にする食べ物=スーパーフード”の勉強していたことがきっかけとなり、養蜂を知ったという。ほどなくして久保さんも同社を退社し、養蜂家として、新たな人生のスタートを切った。

「屋久島の自然の豊かさを活かし何かを生み出すということに触れると、人生の喜びに繋がります」(奥様の律さん)
久保さんは屋久島の自然から、発見と学びの日々を過ごしている。一見、花の無い樹木のように見える植物でも、蜂の辿り着く先に、その植物が有する花の存在を見つける。蜂から、自然の営みの尊さに気付かされるという。

「屋久島は多様な植物が溢れている島です。この島のいたるところで、人間が思いもよらないほどの沢山の蜜が流れ出ています。時期によっては、一度絞ってもまたしばらくすると蜜が溜まっているぐらい、有望な蜜源があるんです。ちなみに蜂の一生で蜜を集める量は、スプーン半分ぐらなんですが、蜂が命をかけて集めたパワーを一滴たりとも無駄にしたくありませんね」

植物の宝庫である屋久島は、島の特産品であるタンカンやポンカンの花が咲く4月を皮切りに、春の大流蜜期に突入する。

「養蜂を営むと、蜂蜜は自然の恵みが凝縮された素晴らしい食べ物だなぁと感じます。食べた人が喜んでくれると嬉しいですね」

屋久島の多様な植物が、島のいたるところで、蜂の来訪を待っている。巣箱から滴り落ちる凝縮された自然の恵みが、久保さんの手で丁寧に絞られている。(取材:Written by 散歩亭 緒方麗)

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久保養蜂園屋久島ファーム 鹿児島県熊毛郡屋久島町安房松峯 https://kubobeefarm-yakushima-1.jimdosite.com/

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