菊池淑廣さん/屋久島メッセンジャー・屋久島ロケーションサービス
屋久島の魅力を沢山の人に伝えるメッセンジャーになりたい
屋久島空港から南へ車を走らせると、洗練された石垣に囲まれた建物が見えてくる。『屋久島メッセンジャー』と書かれた玄関をくぐり、石が醸し出すひんやりした中庭の奥に、ガラス張りのアウトドアショップが建っていた。
「屋久島は、世界を引っ張っていけるぐらいのポテンシャルを持っている場所だと思います」
『屋久島メッセンジャー』の菊池淑廣さんは、2005年に東京から家族で移住した。『屋久島メッセンジャー』代表として、ガイド業やアウトドアショップを経営する傍らで、フォトライターや撮影コーディネーターなどを行う『屋久島ロケーションサービス』としても活動している。
移住前にアウトドアウェアも取り扱うスポーツウェアブランドのプロモーションを担当していたこともあり、屋久島の自然がデザインされたウェアを開発したり、自身の移住生活を描いた『屋久島で暮らす あるサラリーマンの移住奮闘記』を出版したりと、島のPRも兼ねた発信を行う。
「ガイドはもちろん、映画や雑誌などの撮影コーディネートやフォトライターとして、屋久島の魅力を1人でも多くの人に伝えられることは、すごくありがたいですね」
そんな菊池さんの屋久島との出会いは、ふらっと立ち寄った本屋でのこと。夫婦で訪れたハワイ・カウアイ島への旅がきっかけで、”山がある南の島に住みたい”と思い、日本でそんな場所を探していたところ、手に取った本の中に屋久島を見つけた。
「本格的に移住するまでの間、数回島を訪れたのですが、どんどん屋久島に惹かれていきました」
いったいどういう風に生きたら”幸せ”なんだろう
都会育ちの菊池さんが自然豊かな田舎で暮らすことを決めたのは、新婚旅行で訪れたアフリカで、マサイ族の生き方を目の当たりにしたことがきっかけだったという。経済的価値観に軸に置きがちな日本人に対し、まるで野生動物のように”シンプルに生きるために生きる”マサイ族。それまでの価値観が覆され、人生観が変わった瞬間だった。「いったいどういう風に生きたら幸せなんだろう?」と自問自答し、たどり着いたのが自然の中で暮らすことだった。
それから屋久島に引き寄せられるかのように、様々なことが屋久島へと繋がって行ったという。
「ある日、テレビで屋久島出身の方が、故郷の自然を守るため立ち上がったという内容の番組を見たんです。僕は、あまりに感動して、気付いたら号泣していました。そのとき、”自分の生まれ故郷のために行動するその思いって何なんだろう?”、そして”そんなふうに心を掻き立てさせる、屋久島の魅力を知りたい”と思いました」
精神的な豊かさ。満たされている日々
菊池さんに、実際に屋久島に住んでみてどう感じているかと伺うと、すぐに答えが返ってきた。
「思ってたとおり精神的にもとても豊かです。自然の中で2人の子供を育てられたことも良かった。友人に”スローライフを求めてきたのに、全然スローじゃないじゃん!”と言われるほど毎日忙しいのですが、島での生活はとても満たされています」
そんな菊池さんがガイドとして案内するツアーは、『パワースポットめぐり』や『秘境の滝めぐり』など、集落の人々が大切に祀っている神社や、菊池さん自身が好きな場所など、観光名所にこだわらないスポットにも案内するという。
屋久島メッセンジャーの建物は、建築家堀部安嗣氏によるもの。店内では屋久島産のフルーツを使ったドリンクを提供している。石垣のひんやりした空気感に包まれて、トロピカルジュース片手にホッとひといきしながら、菊池さんのお話を伺うと、屋久島の自然に導かれた豊かな時間の流れを感じる。
(取材:Written by 散歩亭 緒方麗)
name | 屋久島メッセンジャー |
住所 | 鹿児島県熊毛郡屋久島町小瀬田413–76 |
TEL | 0997–43–5630 |
URL | https://yakushima-messenger.com/ |