4夜に渡る窯の火入れ

YAKUSHIMA FILMのSHUです!
今回は屋久島の安房集落にある『はにい窯(埴生窯)』の火入れのエピソードをお届けします。

2023年6月3日。
この日は1年に2、3度しかない“火入れ”の貴重な瞬間でした。

三日三晩、火を絶やさない気力と体力の勝負

窯元の山下正行さんは、電気やガスではなく薪窯にこだわります。
薪の灰が作品に独特の色を与えてくれるのだそうです。

ただ、それは容易な事ではありません。
窯の温度を高温にするため、一度火を焚き始めると三日三晩燃やし続けなければならないのです。
今回は息子さんがちょうど帰省していたタイミングだったため3人で交代しながら出来たことを安堵していましたが、普段奥さんのあけみさんと2人でこの作業を行う時はやはり大変な疲れが残るとのことでした。

最初は15分おきに窯の手前から。
白かった煙は徐々に黒くなり、やがて煙に火がついて煙突からは火柱が出ていました。
終盤に差し掛かると10分おき、更には窯の横3箇所から絶えず薪を入れ続けるため座ってゆっくり食事も出来ず、おにぎりと水分だけで乗り切ります。

窯の中は⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎℃の灼熱

2日目には手前にあった山積みの薪が綺麗に無くなっていました。

なんと、窯の温度は“1,300℃”にまで上がるそう。
この温度まで上げなければ山下さんの満足いく作品は創り出せないのです。
薪を燃やせば温度が上がるということでもないそうで、これまでの40年間すべての火入れをまとめてきたノートには山下さんが導きだした極意とご家族の貴重な時が記されていました。

これだけの薪はどこから来るのか?

想像してみてください。10分-15分おきに薪を4日間燃やし続ける為に、どれだけの薪が必要でしょうか。当初は山下さん自ら木を切り、斧で薪割りをしていたそうです。
年に2、3度しか火入れ出来ない理由が段々と分かってきました。
作品を創る手先の技術だけでなく、窯を手作りし、木を切り薪を割り、そうしてようやく完成する作品からは、山下さんの笑顔を思わせるような優しさや温もりが感じられました。

作品作りの根底は“家族の愛と信頼”

4日間この火入れ作業に密着させていただき、共に時間を過ごしていて僕が感じたこと。

カメラで捉える世界も、窯だけではなく
山下さんの情熱を一番に理解するあけみさんと、小学3年生から手伝いをしている息子の万希君。
このご家族の会話や表情に自然とシフトしていきました。

実は山下さんご夫婦にはもう一人娘さんがいらっしゃいます。
生後まもなく星となってしまった彼女の名前を引き継いだ『埴生窯』
本当に温かい家族の愛が溢れていました。

火入れを見れる機会は年に数回しかありませんが、山下さんご夫婦はこの後作品を窯から取り出し、新たな作品制作、薪割り、そして次の火入れへと…
豊かな日々の暮らしを紡いでいくのですね。

短編ドキュメンタリー

4日間の火入れの様子を3分間の短編動画にまとめました。
是非ご覧ください。


はにい窯(埴生窯)

住所:鹿児島県熊毛郡屋久島町2294-45
TEL:0997-46-2179

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