まだまだ知られていない屋久島
今年の夏、やっと見られた花。
この花を最初に見つけたのは2021年8月。開花時間が短いうえに、1株しか見つけられませんでした。
やっと今年2024年、開花状態を撮影することができました。
花の名前はアシナガクモラン。蘭の仲間で、従来は台湾のみで知れていて、日本では見られない植物と考えられていました。
ちなみに、日本本土ではクモランという、良く似た蘭が見られます。
もちろん、鹿児島本土でも「クモラン」は見られます。是非、探してみてください。
この蘭の最も特徴的な点は葉が無く、根が樹の枝や幹にべったりと張り付くところです。
その根の様子がクモっぽいので、クモランと呼ばれます。
アシナガクモランはクモランより根が扁平で、花柄(かへい:花と茎や枝を繋ぐ部分)に小さな突起がたくさん付いているようですが、一見しただけでは分かりません。
さて更にマニアックな特徴としては、根は葉の代わりに光合成することが近年解明されました。
2022年花の無い時期、アシナガクモラン全体を撮影。教科書的な植物のイメージが破壊されます。
花はご覧の通り微小です。
この株には以前の花柄が、しおれて残っていました。
2022年春時点で4本の花柄が確認でき、少なくとも2018年から花を咲かせていたと推測できます。
※上の写真でも花が付いた緑の花柄の上に平行して、2023年に開花した時の白っぽい花柄が見られます。
発見地は年に数回は訪れていた場所だったので、今まで何度も見逃していたかと思うと非常に悔しく思います。まだ見つかっていないだけで、屋久島の人里近くでも見られると私は思っています。
更に口永良部島、十島村や三島村、そして種子島や鹿児島県南部でも見つかる可能性があると思っています。
逆にクモランは屋久島から見つかっていませんが、生育していても良さそうです。
地味な植物かも知れませんが、まだまだ分からないことが多くあります。
2022年に許可を得て採取した花柄。4本中2本はコケに覆われていました。
去年2023年11月、神戸大学の末次教授により、アシナガクモランの論文が発表されました。
1㎝に満たない植物欠片が、この植物が屋久島にあった証拠となり、論文中で屋久島にも存在することが公表されました。
植物以外にも、まだまだ発見は続きそうです。
まだ未発表で詳しく書けませんが、屋久島自宅の庭からはまだ名前の無い昆虫(論文を書くと新種になる)や沖永良部島より北で確認が無かった昆虫などが見られます。
そのことに付いて研究者が論文を書いたらまた改めて詳しくご紹介したいと思います。
自然がいっぱいのこの島は、人類が知らないこともいっぱいあります。
参考文献:
Kenji Suetsugu.2023.”First Record of Taeniophyllum complanatum (Orchidaceae) from Ryukyu Islands, Japan”.In Acta Phytotaxonomica et Geobotanica Volume74 Issue 3.
Kenji Suetsugu.2023.”Aerial roots of the leafless epiphytic orchid Taeniophyllum are specialized for performing crassulacean acid metabolism photosynthesis”.In New Phytologist.