上山利光さん/屋久島草思園

屋久島の植物や熱帯果実を届けたい

施設内に入ると、鬱蒼とした屋久島の森が再現されている。ヘゴやシダが生い茂り、屋久島植物の世界観がそこにある。

「最近ようやく気が付いたのですが、私は同じ植物好きの中でも、植物を増やすことが好きなようです」

上山利光さん/屋久島草思園

そう語るのは“屋久島草思園”の上山利光さん。
安房集落から車を南に向かって10分ほど走らせると、平野集落の県道沿いに屋久島草思園の看板が見えてくる。敷地内には、沢山の植物が鉢植えされ、併設の無人市には屋久島の植物が小さな鉢で売られている。

上山利光さん/屋久島草思園

屋久島草思園は、ツツジやシダやヘゴなどの多数の屋久島自生種に加え、観葉植物や熱帯果樹苗木なども販売。上山さんは花卉担当として毎日植物中心の生活だという。また、タンカンやパッションフルーツなどの熱帯果樹園は息子さん夫婦が担当し、無農薬で栽培。屋久島の自然の恵みを受けた果実や植物を、家族ぐるみで島内外の人たちに届けている。

「ここ平野集落の山際は、昔から”雨の巣”と言われていて、シダやコケなど胞子を出す植物にとって、発芽しやすい自然環境にあります」

上山利光さん/屋久島草思園

屋久島は高い山々の影響を受けて、集落によって気候やその日の天候などが大きく変わる。比較的雨の多い平野集落は、屋久島自生の植物が活きいき育つには恰好の場所なのだろう。

役場職員から土を触る毎日へ

そんな上山さん、かつては役場職員として、屋久杉自然館建設や日本で初めての世界遺産登録などを経験した。また、当時の周囲から聞こえてくる話では、世界遺産登録への伏線にもなった屋久島環境文化村構想の際から、不安の募る住民への説明会で常に第一線に立ち、住民の声と真摯に向き合ったと耳にする。

「当時のことを振り返ると、大変貴重な体験をさせてもらったと思っています。本来の地方公務員の業務では経験できないことばかりでした。ですが同時に、屋久島は次の目標をしっかり立てなければ、と身が引き締まる思いがありました」

上山利光さん/屋久島草思園

旧屋久島町役場では、環境政策課の初代課長として、ゴミ処理問題(ゼロエミッション)に取り組んだ。

「屋久島の自然を守る、ということに対し、私自身も強い思いがありました。私はいま役場をリタイヤし、植物や土を触っています。それぞれの植物の成長を見つめながら大切に育てるということが、とても楽しいんですよ」

屋久島草思園では、コケ玉教室も開催している。上山さんが大切に育てた植物の命が、小さなコケ玉の上で生きている。

上山利光さん/屋久島草思園

(取材:Written by 散歩亭 緒方麗)

屋久島草思園

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