屋久島春牧集落が里めぐり本を出版

屋久島の東側にある春牧(はるまき)集落は、安房港から南に2キロほど行った場所で、ヤクスギランド、縄文杉、宮之浦岳へとつづく荒川登山道への入り口がある集落です。

集落の住民たちが、集落の歴史や文化などをまとめた本を作りました。
本をなぜ作ったのか、本に込めた思いやその内容など取材しました。

「私たちは、生まれ育ち、そして今に暮らす古里(ふるさと)春牧が、賑やかで元気のあるまちであり続けてほしいと願っています。」(はじめに より)

南方新社から今年2月に刊行された「屋久島 春牧里めぐり里語り読本」。

集落の歴史、自然、先人から伝わる民話や体験談などをまとめた本で、集落で里の体験型ツアーを実施する春牧里めぐりの会の14人が中心となり、およそ3年の歳月をかけて作りました。

(春牧里めぐりの会 石川國明会長)「伝承、言い伝えられてきたことを今、我々が残さなければいけないという気持ちで本づくりをしました」

春牧里めぐりの会の会長、石川國明さんです。

60年以上春牧集落で暮らす石川さんは、本を刊行することで集落の歴史や文化を後世に伝えるとともに、多くの人に集落を訪れるきっかけになってほしいと願っています。

そんな石川さんが、思い出深い場所として本の中でも紹介しているのが、サンゴ礁でできた磯海岸・春田浜です。

「以前は、小・中学生などが学校行事の遠足で、大人たちは磯遊びで、五月の連休などには多くの人が訪れていました。古(いにしえ)から、親しまれて来た春田浜には語り尽くせない歴史や人々の営みがあります。」

(春牧里めぐりの会 石川國明会長)「貝殻やら海藻やら魚釣り、夜はタコがサンゴ礁の間に現れますのでそのタコ採りとか。」

石川さんにとっては家族の思い出が詰まった場所でもあり、毎年、元旦は、ここで初日の出を拝んでいるそうです。

(春牧里めぐりの会 石川國明会長)「太陽がちょうど真正面から上がってきますので、海面を太陽が自分に向かってパッと光が走ってくるような。すごく大きなエネルギーをもらったような気持ちになる」

こちらは、春牧集落の横峯遺跡です。

竪穴住居跡が126基あり、未発見も含めると最大で250基にもおよびます。

集落の住民などでつくる春牧横峯縄文クラブが、竪穴住居を復元して展示しています。

「横峯遺跡の最大の特徴は、大量の住居跡が発見されたことです。西日本でこれだけ多数の住居跡が発見されるのは異例で、それだけでも遺跡の重要性がわかります」

(春牧里めぐりの会 石川國明会長)「いまから3500年前から少なくとも人が住んでいたということになります。水があちこちから湧き出ていまして、すみやすい地域であったから人はよそへ行かずここでずっと住んでいたんじゃないか」

本の中ではこのほか、鬼火たきや祝い申そう、山の上で五穀豊穣を祈る岳参りなど自然に感謝し、暮らしに欠かせない伝統行事なども紹介しています。

集落に伝わるこんな遊びも。

「ウラジロの葉は、表が緑色で裏が白っぽいことから、人生にたとえ、裏表がありませんよということで、お正月のしめ縄にも使われています。」

「二枚の葉のバランスがよいため、私は高さのある松峯大橋から飛ばしてみました。すると、すごく面白いのです」

集落に伝わる「ウラジロ飛ばし」
葉が鳥の羽のように広がり遠くまで飛んでいきました。

このように、本には集落の歴史から、習慣、住民の思い出まで様々なものが詰まっています。

石川さんは集落の記憶を記録として残すことが、必要だと話します。

(春牧里めぐりの会 石川國明会長)「記憶のあるうちにいろんな伝承、先輩たちから聴き集めて本に残す、そういうことが大事」

(春牧里めぐりの会 石川國明会長)「他の集落もやっていただけたら、屋久島全体に、掘り下げられた文化が残っていくと思っています」

屋久島春牧里めぐり里語り読本は県内の主要な書店で買うことができます。

「屋久島春牧里めぐり里語り読本」
主要書店で販売中
定価:本体1,100円(税込)
問い合わせ:0997-46-2938(春牧区事務所)

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