津波避難訓練にかける子どもたちへの想い

こんにちは、MBC屋久島支局の藤本です。

大地震により津波が発生した想定で、地域と学校が連携して取り組む津波避難訓練を取材しました。

屋久島町宮之浦 平和町海岸地域。
小学校と中学校が立ち並ぶこのエリアは海に川に隣接している海抜5m未満のエリアです。

避難開始の放送とともに上履きのまま校舎から飛び出す中学生。
各自で目標地点まで迅速に避難するように指示されており点呼や整列は省略。
向かう先は1.5km離れた海抜40m以上の高台です。

小学6年生は、新1年生の小さな手を握りしめ、息を切らしながら坂を駆け上がります。

必死で避難する子どもたちを声をかけながら見守るのは、この合同避難訓練の立案者・矢野憲一さん。

「避難完了までの目標タイムはクリアです。今年も無事に。」

2011年、東日本大震災で大津波の映像を目の当たりにした矢野さん。
その後の訓練で避難経路が人と車の往来で混雑し避難行動が進まず、学校のグラウンドで整列したまま7分も8分も立ったままの小学生達を見て思いました。

「このままでは命が助からない。」

避難訓練後、矢野さんは小学校のPTA会長や校長、地区の役員と話し合い、本格的な避難行動を実行できるよう、8年前に平和町海岸地域津波対策協議会を発足。

「川や海の方角からだけじゃなく、溝や小さな川から先回りして水が溢れてくるんです。気づいたときには遅い。」

矢野さんたちはこのエリアすべての水路や川を調査し、避難計画を立案しました。

「私は地元の人間です。この子供たちの命を守るのは先生方でもあるんですけど、 地元の私たちが、先生方と一緒に積極的にこの子供たちの命を守るというのが一番の想いです。」

避難訓練の目標タイムはクリアできても、まだまだ課題はあります。
もし、実際に津波が来た場合は、たくさんの車も同じ道を避難します。
車に子どもたちが通行を阻まれることもあるかもしれない。
子どもたちのために車に止まってもらうという考えもあるが、
その車に乗っているのも子どもたちの親や、兄弟だったりするわけです。
もっともっと、避難に適したルートを考え行動していかなければなりません。
皆でやるしかない。

参加した中学生はこの訓練について、
「本当に津波が来たとき、どうすればいいか分かる。この訓練は”真剣”です。」と答えてくれました。

矢野さんの子供はすでに中学校を卒業しています。
「訓練は変わらず続けます。何度も何度も身体に染み付くまで。必ず命が助かるように。」
「避難訓練は変りません。毎年同じです。来年もこの形でこどもが同じタイムでポイント通過してほしい。」

必ずという言葉に矢野さんの強い決意を感じました。

 

(取材協力)
平和町海岸地域津波対策協議会
屋久島町立中央中学校
屋久島町立宮浦小学校


記事・撮影
MBC屋久島支局 藤本新平

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