奥岳の秋は紫色

こんにちは。YakushimaFilmのシュンゾウです。

屋久島の奥岳はすっかり涼しくなり、朝晩はダウンジャケットが必要なほど冷え込むようになりました。冬を予感するほど秋が深まっている山岳ですが、本土の山と違い、冬になっても写真のように山肌は青々としているので、物悲しさはなくトレッキングしているとなんとも清々しい気持ちになります。旅人の笑顔からも山の爽快な空気感が伝わってきます。

そんな屋久島の山岳エリアは、夏場に全盛を迎えた高山植物の開花が終わりを迎えようとしています。今年もたくさんの高山植物が咲いて登山を楽しませてくれました。

今回は10月まで残っている高山植物の花を紹介したいと思います。僕の屋久島での高山植物の定義は標高1600m以上の過酷な環境の山岳に生きる者たちです。

キッコウハグマ(径5mm)

ツルリンドウ(径10mm)

屋久島固有種ヤクシマアザミ(径20mm)

屋久島固有変種ヤクシマママコナ(径5mm)

去年の10月にはイッスンキンカやヤクシマシオガマ、ヤクシマウメバチソウも確認できましたが、黒味岳〜宮之浦岳の登山道で確認できた高山植物の花は2021年10月8日現在、今年はこの4種だけでした。9月上旬に比べるとグッと減った印象です。この時期から開花が始まる高山植物には出会ったことがないので、彼らは開花のアンカー。奥岳の山肌に今年最後の彩りをひっそりと添えてくれています。全ての花に紫が混じり、奥岳の秋の季語にしたい気分になります。ここで一句と言いたいところですが、そのセンスがまったくないので、どなたか一句お願いします。笑

彼らは、それはそれは繊細ないでたちで立ち止まってかがまないと気づかないほどの小ささですが、その小ささが僕の心の中では何百倍もの大きさへと変貌します。

10月朝晩の気温は5〜10度前後。強風が吹けば体感温度は氷点下になる過酷な環境下で、この無防備な容姿でモノを所有することなく、また里に逃げ出すこともせず、いったいどのようにして生き抜いているのでしょうか。

およそ7000年前の火砕流で屋久島の森が壊滅的な打撃を受けてから今日まで、彼らは矮小化という方法で体を小型化させながら生き続けてきました。その反面、僕ら人間は快適さや利便性を一心不乱に追い求めテクノロジーを進化させ都市を巨大化させ続けてきました。

生きものの尊さに優劣がないとしたのなら、僕とこの小さな植物たちの命のつむぎかたはどちらが賢く永続的なのでしょうか。

彼らに問うも
彼らは何も語らず
ただ花を咲かして
ただただ散っていくだけ

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