山下あけみさん/はにい(埴生)窯

陶房のちょっとした日常を漫画で発信

あけみさんの日常は、漫画チックな出来事に彩られている。
ミルクを飲みに来るムカデ、ひと晩にネズミを3匹捕まえてくる猫、浜辺でひっくり返ったウミガメ。安房集落から山手に見える松峰大橋のそば、犬1匹、猫2匹と夫婦の“ちょっとした日常”は、「はにい(埴生)窯」のSNSにつづられる。

美術大学で洋画を専攻していたあけみさんだが、島の陶芸家 山下正行さんの元に嫁いでからは、子育てや日々の暮らしに忙しく、窯を紹介するためのパンフレットや正行さんの個展で来場者に配るために、ときどき窯の紹介漫画を描くくらいで、じっくり描くことからは少し遠ざかっていた。

大きな転機になったのは、幼い娘との別れだった。
病院での付き添いの長い時間に、目についたものをスケッチしていたあけみさんの様子を見ていた医師が、「南日本新聞」の連載をまとめた単行本『こども救急箱』(NPO法人こども医療ネットワーク)への挿画を依頼してきたのだ。
Vol.5まで刊行された『こども救急箱』の作画に打ち込む中で、ゆっくりと「描く」ことへの情熱が蘇ってきた。

正行さんの作品作りにも変化があった。
あけみさんのスケッチをもとに、童子や観音像、これまで手がけてこなかったモチーフの夫婦合作シリーズが生まれた。

加えて、2015年に立ち上げた「はにい窯」の公式SNSで、「ちょっとした日常」のカラー漫画の連載をスタート。不定期ながら、150本を超える回が重ねられ、島内外で親しまれている。
今年からは、屋久島の情報発信サイト「YAKUSHIMA ZINE」でも毎月1本、季節の漫画を描き、読者をじわじわ拡大中だ。

お隣の種子島で育ったあけみさんにとって、親戚も暮らす屋久島は、幼い頃から馴染み深い島。漫画には、ふたつの島の違いや共通点も独自の視点で描かれている。
隣り合った島でも、高い山々を抱え、降雨量の多い屋久島の湿気は段違い。それでも、「屋久島の魅力は水の豊かさ」(あけみさん談)。水量豊かな安房川と緑濃い照葉樹の森に囲まれた暮らしから、日々、創作のインスピレーションを受け取っている。

はにい(埴生)窯
https://www.facebook.com/haniigama

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