牧隆之さん/飛び魚すり身「松田商店」
屋久島のソウルフード「飛び魚のツキアゲ」!
70年以上続く原料づくりを受け継ぐ若き三代目。
屋久島は飛び魚の名産地。胸ビレを大きく広げ、海面に飛び出し約100〜300メートルほどの距離を飛ぶ姿は、まるで小さなグライダーのよう。屋久島では、刺身や焼き魚、茹でたり、姿揚げにしたりと、様々な食べ方で親しまれている。なかでも、島民なら誰もが知ってる“飛び魚のツケアゲ”は、大人から子供までみんな大好き。島のソウルフードとして、昔から愛されている。安房地区近く船行集落の県道沿いにある“松田商店”は、飛び魚ツケアゲの原料であ“飛び魚すり身”の製造店。青いパッケージを目印に、遠方から買いに来る人も多い。
「負けてらんないな」と、家族で力を合わせて
「うちは、刺身にするほど新鮮な飛び魚だけを、臭みを出さないように、丁寧に捌いて作っています」
そう語るのは、牧隆之さん。奥様の実家である“松田商店”を引き継ぐため、次期三代目として義叔母や義母と3人で、70年以上続くすり身の味を守っている。松田商店は、もともと惣菜屋さんからスタートしたお店。その中で一番人気だったのが、飛び魚のツケアゲだったという。現在96歳のサチばあちゃんのオリジナルレシピは、新鮮な飛び魚に秘伝の味付けを施した代々受け継がれる味。口コミやリピーターなど全国から注文が入るため、飛び魚が獲れれば朝6時〜夜8時ぐらいまで、ひたすら魚を捌くという。
「はじめの頃は、立ちっぱなしで、一日中飛び魚を捌く日々に心が折れた日もありました。でも、大先輩の義叔母や義母は、かつて2.3時間の睡眠でも、何も言わず黙々と捌いていたと聞きました。それを聞いて“負けてらんないな”って気持ちになりました」
「ここじゃなきゃダメ」と遠くから買いに来てくださるお客様を待たすわけにはいかないと、ほぼ無休で働き、男手が無い職場の力仕事は、ほとんど牧さんが行う。
牧さんは、屋久島の北西に位置する、永田集落の出身。もちろんソウルフードであるツキアゲは、小さい頃から食べていたという。
「パックから取り出して、ただ切って揚げるだけでも美味しいですが、鍋や味噌汁に入れても、天然のあご出汁になって美味しいですよ」
毎日見ている食材なのに、食べるたび「美味しい」と感じるという。
「この味を自分で終わらせるわけにはいかない。気張らんといけんですね」
島のソウルフードは、三代目の手に託されている。
取材:Written by 散歩亭 緒方麗
松田商店
- 住所:鹿児島県熊毛郡屋久島町船行337-1
- TEL:0997-46-2941