江口克司さん/靴工房「Ponpon yakushima」・ハンバーガー屋「Sun gan barger」

商店街の真ん中に靴工房&ハンバーガー屋さんが移転。老舗靴店で修行した職人のハイセンスな靴が並ぶ

安房の商店街の真ん中に、素敵な靴屋さんとハンバーガー屋さんが同居した、お洒落なお店がオープンした。

靴職人の江口さんは、屋久島の最西に位置する栗生集落の出身。小学2年から中学まで屋久島で育ち、鹿児島の高校を卒業後、1年間の予備校生活を経て東京の有名デザイン専門学校に通っていた。その後、広告業界でデザインやイラストの仕事をしていたが、次第に造形など立体的な仕事に憧れを持つようになった。

江口克司さん/靴工房「Ponpon yakushima」・ハンバーガー屋「Sun gan barger」

そんなとき、たまたま新聞広告に載っていた靴職人の募集が目に止まり、世界中から愛好家が絶えない登山靴店として有名な「ゴロー」に就職。初めはそんなに興味のある分野ではなかったと言うが、そこで働く職人達の仕事ぶりに触れたことで、靴をゼロから作り上げる面白さを知り、「これで生きて行こう」と心に決めたという。

「当時の自分は、やりたいことがあるけどなかなかそこに辿り着けないというもどかしさで落ち込んでいました。就職したゴローには11年間務めましたが、よくあのときのチャランポランだった自分を受け入れてくれたなぁ、と今でも本当に感謝しています」その後、ゴローを退職し、東京西荻窪で小さな靴屋を10年続けたあと、2011年に屋久島へ帰ってきた。地元の栗生集落で、まず靴屋「pon pon yakushima」をオープンし、続いてバーガー屋「sun gun burger」も始めた。2020年1月より現在の安房商店街に移転した。

江口克司さん/靴工房「Ponpon yakushima」・ハンバーガー屋「Sun gan barger」

手の届きやすいものづくり

Pon pon yakushimaでは江口さんが手がける革靴や、奥様が作る雑貨が並び、sun gun burgerでは屋久鹿や黒豚や黒毛和牛のバーガーの他に、ピザやカレー、アゴダシのおでんなど、食材もなるべく島内や県内のものにこだわったメニューが並ぶ。どちらも「若い人や地元に住む人たちに手の届きやすいものを作りたい」という江口さんの思いから、良心的な価格だ。

「島に帰り、家族を持ってとても幸せ」と語る江口さん。靴作りも料理も、全てはこれまでの人生での経験や出会いに繋がっていたという。

「例えば島に帰り、自然を見ると、感動と同時に”色の補色”について考えたりします。これは美術学校で勉強していたことに繋がっていました。でも、自然はたまにその法則を打ち破るほどの、思いもよらない現象が現れるのも楽しいですね。あと、自分はこれまで人に恵まれていたなぁと思います。専門学校時代の友人や、ゴローでお世話になった方々など、靴を作っていたらいろんな人と縁が繋がり、助けられています」

江口克司さん/靴工房「Ponpon yakushima」・ハンバーガー屋「Sun gan barger」

江口さんは、これまでお客さんのライフスタイルに合わせた靴を提案している。しかし、これからは少しずつ”自分の作りたいもの”を打ち出してみたいという。「”かっこいい”はその人のアイデンティティが出ているかどうか」と語る江口さんの自身のアイデンティティは、今年から安房商店街の中にある。

ponpon yakushima

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