屋久島初記録・コガネムシ ヤエヤマニセツツマグソコガネ
屋久島から、ある昆虫が初めて発見されたという話題をご紹介します。
発見した屋久島環境文化研修センターの渡邉卓実(わたなべ・たくみ)さんとにお話を伺いました。
私は3年前に神奈川県から屋久島に来まして、学生の頃、東京にあるフィールドワークや環境教育を学べる学校を経て、現在屋久島環境文化研修センターという環境教育をベースとした研修を提供する施設に勤めています。
今回発見した昆虫、名前は「ヤエヤマニセツツマグソコガネ」です。
Q.渡邉さん、よくこんな小さい虫を見つけましたね。
A.最初は川に暮らすエビの調査をしていまして、流れの無い枯葉などが溜まっている場所へこのタモ網(現物を用意)ですくった際に、一匹だけ川には居るはずのない昆虫が紛れ込んでいました。
研修センターへ戻ってから顕微鏡を使って調べたところヤエヤマニセツツマグソコガネだと分かり、私の持っている資料では屋久島に分布をしていないと書いてありました。屋久島には私以外にも昆虫を調べられている方がいらっしゃいましたので、ご教授いただいたところ、やはり今まで屋久島での記録が無かった事が分かりました。
研修センターでは、こちらのスタッフが島内外の学校へ呼んでいただき、講義を行う事があります。その際、生徒さんへお話しする内容として是非新しい発見があった事や島外の方々にも屋久島を知っていただきたかったため、全国で販売される専門誌に記載していただきたいと思いました。
Q.なんでも渡邉さんは、虫が大好きなんだとか。
A.小さい頃から身近にいた存在でした。専門学校から本格的に昆虫を勉強して、その際はカミキリムシを中心に調べていました。屋久島へ来てからも昆虫をベースとした環境教育をしており、来た当初は学生の頃と同じカミキリムシの調査などをしてきました。しかし、元々好きだった昆虫がクワガタで、屋久島のクワガタは神奈川県では見られない屋久島固有種や固有亜種が多く魅力的だったため、クワガタを中心とした調査や環境教育することにしました。
Q.ちなみに渡邉さんのお気に入りの屋久島の昆虫はなんですか?
A.やはり、クワガタが好きなのですが、屋久島にはクワガタが9種生息していまして、これが屋久島に生息する9種のクワガタの標本になります。その中でも、クワガタというより屋久島を代表する昆虫のヤクシマオニクワガタは外せません。また、島内で最も数が少ないヤクシマスジクワガタというコクワガタにとても似たクワガタの顎の部分、よくハサミと言われています。その形が変わっていて、クワガタの中では一番好きかもしれません。
Q.お話をうかがっているだけで渡邉さんの虫への熱い思いが伝わってきます。渡邉さんは、屋久島環境文化研修センターの職員でもありますが、今後、この屋久島の昆虫の魅力をどのように伝えていきたいですか?
A.私が常に大事にしていることは、「自分の当たり前は、周りの当たり前ではない」ということです。身近にいて、特に昆虫は小さいので、自分にとって当たり前になってしまっている。しかし、その当たり前にいる昆虫はここ、屋久島でないと出会えないムシたちがたくさん暮らしています。その小さな当たり前には必ず命があり、小さな出会いが大きな発見につながるのが昆虫です。見た目や昆虫というだけで苦手意識を持たないで、知ってから苦手になってほしいです。その知ることで、その昆虫を認知してあげて、その知った事が別の何かの役に立つかもしれません。
見た目だけにとらわれず、魅力や新しい発見というのは子どもや大人に関わらなく、みんな平等に身近にあることを伝えれたらと思います。