白川満秀さん/白川茶園

屋久島らしい商品を!世界遺産屋久島の自然がつくる有機栽培のお茶

屋久島の北側にある志戸子集落を過ぎると「白川茶園」の看板が見えてきた。県道を山手側に進むと、新緑の茶畑が広がっている。

「僕は”本物”を探し求めているんです。この世界遺産の島、屋久島には本物がある」

そう語る白川茶園の白川満秀さんが手がけるお茶は、全て有機栽培で育てられている。

手間暇かけられた茶葉は、有名紅茶店”ルピシア”や、某大手化粧品会社の原料に使用されるなど、様々な市場で屋久島の自然の恵みをたっぷり含んだ無農薬のお茶が人気だ。最近では、海外からの需要も高いようで、特に欧米からの問い合わせが多いという。

「お茶は、屋久島の自然の恩恵を与えられた産物です。空気、水、マイナスイオンなど、自然に守られ、助けられています。有機栽培は、そんな自然の摂理を考えれば、当たり前のことをやってると僕は思います。海外の方は、そんな背景にも価値を感じているんじゃないでしょうか」

雑草や虫さえも喜ぶ美味しい土

茶畑に行くと、真っ直ぐ並んだ茶の木一面、鮮やかな緑が眩しい。春の陽気のなか、燦々と日光を浴びている。

「この畑の土は美味しいと思いますよ。うちは、土壌菌のバランスを考えて、土に無理をさせないようにしてるから。雑草さえもつやつやしてて美味しそうでしょう」

農薬を入れず、土の負担になることはしない。しかしだからこそ、害虫も寄ってくるというが、それほど土がいいのだろう。そんなとき、白川さんはふと害虫について考えたという。

「みんな”害虫”と言って嫌がるけど、神様は”害虫”って作るかな?この世に殺してもいいものなんてないよな」

すると、初めは害虫として嫌がっていた虫が、他のやっかいな虫を退治している事を知り、自然界の中では「害虫が害虫を制する」ということで、様々なバランスが取られていることを知ったという。

「お茶を作ってて思うのですが、僕たちは、自然界の生存競争を勝ち抜いてきたものから、恩恵を受けているだけなんですよ。だから当然これらの生物は、生命力も凄い。とにかく全て屋久島から教えられたことです」

白川茶園の商品は、緑茶だけに限らず、紅茶、プーアール茶、シナモンやしょうがやタンカンやウコンなどと紅茶をかけ合わせたものなど20種類以上。もちろん全てが有機栽培だ。ひとくち飲むと、その香りの高さに驚く。じんわりと身体に染み渡るようだ。

最近お茶は、感染症予防などの観点から特に注目されている。なかでも”紅ふうき”と呼ばれる茶葉は、しぶい苦みが特徴的だが、ウィルスを減少させる可能性があるという研究もなされており、販売してもすぐに売り切れるという。

お金を稼ぐことだけが人生の目的ではない

白川さんは、屋久島出身。小学六年生のときに、母方の実家がある種子島に渡ったが、その後に上京。20歳で奥様の栄子さんと結婚し25歳にはビルメンテナンスの会社を設立した。しかし「これじゃすぐに目的を達成してしまう」と会社を譲り、32歳のときに生まれ育った屋久島に帰ることを決意。お茶栽培は昭和61年から始めた。当時から、屋久島の自然に負荷をかけず作れる有機栽培の商品と決めていたという。

「初めは有機栽培について”そんなんじゃ飯は食えん”などと反対されたりもしました。僕はこだわる性格でね。誰かにそう言われても、お金を稼ぐことだけが人生の目的ではないと、自分を信じてここまでやってきました。今でも”屋久島に迷惑かけてないかな?利用してるだけになってはいないか?”と、自分を常に振り返っています」

そんな白川さんの横でニコニコしている奥様の栄子さん。結婚して54年間、ずっと白川さんと共に、この茶畑でお茶作りを営んできた。種類豊富なお茶を、ひとつひとつ丁寧に淹れてくれた。

有機栽培で作られるお茶は、色はそんなに出ないんです。でもそのかわり、うちでは茶の木の色を出すようにしています。自然のまま、お茶が本来持っている味、色、香り、出てきた芽を大切に育てて、お茶という商品にするのが僕の使命だと思っています。屋久島は、マイナスイオンの風が吹き、森に染み込み、霧となって里へと降りてくるという恵まれた環境にあります。屋久島の味をお茶で表現したいですね」

“山笑う”とは、春を表す言葉。茶畑の背後の山では、山桜が満開だ。

「僕が思う最高の贅沢とは、自然豊かな屋久島に来て、屋久島の水で、お茶を飲んでいただくことです」

健やかな畑で育ち、最高の自然環境に見守られ、白川さんの実直な手で愛でられたお茶を、是非屋久島で味わってほしい。

(取材:Written by 散歩亭 緒方麗)

  • (name)屋久島 白川茶園
  • (住所)鹿児島県熊毛郡屋久島町志戸子298
  • (TEL)0997–42–1333
  • (URL)http://www5c.biglobe.ne.jp/~sirakawa/
  • (備考)5/9の志戸子ガジュマル祭りにて、鹿児島茶のサンプル品を無料配布予定。先着600人限定

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