千々岩孝道さん/写真家

「出会いは偶然だっだけど、準備はできていた」

©︎BZH PHOTO

「遅咲き」と言われれば、そうかもしれない。
千々岩孝道(ちぢいわこうどう)さんの写真家への道のりは、少し人と違っている。

©︎Kodo Chijiiwa

専門学校で、イラストレーションを学んだのち参加した、写真家荒木経惟氏のポートレイトプロジェクトで写真の魅力に目覚めた。
自分の外側にあるものを使わざるを得ない写真という表現手段に、強く惹かれるものを感じ、写真の世界に飛び込んだ。
2008年、ドイツ ベルリンにて写真家Iris Jankeのアシスタントを務めた後、独立。しかし、現地での生活が思うように成り立たず、息抜きも兼ねて、屋久島で宿泊施設を営む家族の元に身を寄せた。
そんな時、出会ったのが、フランス人写真家Antonin Borgeaudさんだ。「英語が通じる宿」ということで訪れたAntoninさんの目に飛び込んだ壁の写真。すぐに意気投合し、カメラを手に島の森を一緒に巡った。「出会いは偶然だっだけど、準備はできていた」と千々岩さんは回想する。

当時、家族は屋久島に住んでいたが、千々岩さんは屋久島育ちではない。千々岩さんが成人してからの移住になる。幼馴染がいるわけでもない島は、故郷というには遠く、長期滞在先というには近く、それでも大切な家族が暮らすホームということには変わりない。

©︎Kodo Chijiiwa

それまで、海外の写真を中心に撮影していた千々岩さんだが、Antoninさんの勧めで、半径1メートルの世界から徐々に対象を広げていった。家族のポートレートから、玄関出て集落の人々へ。そうして身近な対象に目を向ける中で、自身が大きく変化していくのを感じていった。

出会いから1年後の2015年にはAntoninさんたちとともに「屋久島国際写真祭 Yakushima Photography Festival(YPF)」を設立。島の各地を舞台に、第一回屋久島国際写真祭を開催する。

同年、フランスパリで開催されるParis Photo期間中にPhoto Doc,にてYPFとしてブース出展の際、ベストギャラリー賞を受賞。その後も、ヨーロッパ各地のフォトフェスティバルに参加してきた。

©︎Kodo Chijiiwa

そして、今年9月から、京都と兵庫県的形市で国内で異なる内容のふたつの個展を開催する。
9月17日から10月10日の期間、「Kyotographie satellite event KG+ 2021」にて 「Len Kyoto Kawaramachi」(京都市)を会場に、屋久島の作品で構成された「流動との対話 | Dialogue with flow」展を。

9月18日から11月14日には、「Art space M1997」(兵庫県的形市)で、前年に同地でに滞在して制作した「瞬刻のタブロー | Twinkling tableau」を展示する。

どちらも初日のみ、在廊を予定している。

©︎Manmaru

さらに今年は、両親が営んできた「旅人の宿 まんまる」を本格的に引き継ぎ、6月にリニューアルオープンさせた。新型コロナウイルスの感染状況が落ち着けば、この宿を舞台に、宿泊型の写真のワークショップなども企画していく。

また、並行して、「屋久島ファウンドフォトアーカイブスプロジェクト」を新たにスタート。個人のアルバムに眠る屋久島の古い写真を、集落ごとにカタログにして出版する試みや、引き伸ばした写真を集落の堤防に展示する屋外写真展もはじめた。

©︎Kazuki Matsuoka

半径1メートルから少しずつ外へ外へ。
世界を巡った写真家は、ゆっくりと島に根を下ろしつつある。

(取材:一湊珈琲編集室 高田みかこ)

千々岩孝道
https://www.kodochijiiwa.com/

旅人の宿 まんまる
屋久島町安房540-19
TEL. 0997-49-7107
https://www.manmaru-yakushima.com/

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