田中あゆみさん/Ecovillage aperuy

マダガスカルの女性たちに学んだ「生きてる」を実感する暮らし


安房港からほど近い、緑深い休耕田に広がる「Ecovillage aperuy(エコヴィレッジ アペルイ)」の一角に、この秋「量り売り&カフェaperuy」がオープンした。

カフェが提供するのは、動物性食品を使わないヴィーガン焼き菓子や飲み物。量り売りする商品は、調味料、粉類、スパイス、麺類、ナッツ、乾物といった食品から、洗剤まで。顧客は容器持参で店に訪れる。
離島では、ごみを資源として再利用するにも限界がある。元々友人たちと取り組んでいた共同購入を発展させて、できるだけごみを出さない暮らしを目指してきた。
店を取り仕切る田中あゆみさんの仕事は、ひと言で言い表せない。

夫婦で、無農薬の野菜作り、廃材と地元産材を使った家づくり、塩づくり、養鶏、ヤギ放牧、森のようちえん(現在休園中)、宿泊施設の経営など、多岐にわたる。

屋久島移住13年目にして、今年は敷地内での稲作にも成功した。

田中さんがこうした暮らしを目指したきっかけは、学生時代に国際協力の勉強で訪れたマダガスカルの女性たちとの出会いだった。水を汲み、薪を割り、火をおこしてご飯を炊く。そんな中、最も衝撃を受けたのが、自宅出産の様子だった。日常の延長として、すぐ隣に生死がある暮らし。「彼女たちのようにたくましく、自然と調和した暮らしを営んでみたい」。
田中さん自身、帰国後に3人の子どもを自宅出産したのも、そんな体験からだった。

薪風呂やかまどの暮らしの中に、ときおり登場するカセットコンロ。「私と人と自然に優しい暮らし」は、義務感や我慢ばかりでは続かない。「私」の心と身体を大切にすることは、家族の幸福にもつながる。SNSで発信している家族の暮らしには、試行錯誤が綴られる。

家族で営むエコヴィレッジには、宿泊客の他に、ボランティアスタッフも滞在し、共に農作業や大工仕事に精を出す。ここでの滞在を機に、屋久島移住を果たした人も。
マダガスカルの女性たちから受け取ったギフトは、確実に次の人へと手渡されている。

(取材:一湊珈琲編集室 高田みかこ)

カフェの営業時間は、月曜から金曜の10時~18時。休業などはSNSで告知する。
屋久島町安房2480-28
TEL. 080-8357-3308
https://www.facebook.com/ecovillage.yakushima
https://aperuy.com/

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