撮影成功!白いヤクザル

YAKUSHIMA FILMの松田です。2023年もよろしくお願いいたします。

今回の話題は「白いヤクザル」です。

昨年秋ごろから島の南部で目撃情報があるのですが、なかなか奇麗に撮れた写真や映像がないので2022年の年納めに撮影したく、メンバーと共に探してきました。

「白いヤクザル」の目撃情報はあるのですが、僕自身実際に見たことはなく、どんな姿なのか?本当に存在するのか?半信半疑でした。

野生動物の撮影は相手のタイミング次第なので困難なことが多く、特に移動する特定の個体を狙うのは「予測」と「気力」と「運」と様々な要素が重なったときにしか撮影できません。

今回はたまたま先日知人が目撃したという情報を得て、過去に出没した場所や餌場となる環境、サルの動線を推測して場所を絞り撮影に挑み、運よく撮影に成功しました。初の4Kによる映像も撮ることができました!

本当に白い色のサルが目の前に現れた時には興奮がこみ上げました。噂の白いヤクザルは立派なオスの個体でした。また体毛の一部に色があったり目に色素があることから、アルビノではなく「突然変異の白変種」だということがわかりました。

一般的にアルビノや白変種は敵に見つかりやすく、生存に不利になることが多いと言われています。また、わずかながらヤクザルには「グロージャーの法則」=ある種の恒温動物の中ではより湿った環境(例えば赤道近く)にいるものほど、より重い色をした形態が見られるという生態地理的法則があるため、黒い個体の方が生存に有利である可能性があります。

白い色は雪に覆われた氷河期には環境と同化し生存に有利でしたが、雪が解け植物たちが茂るようになり、特に暖かい地域では生存に不利となり毛の色が変わったと言われています。

しかし、氷河期で生き残るために組み込まれた白色遺伝子は今でも残っているので、ごく稀にこのような突然変種が誕生します。ホワイトタイガーなどと同じです。

白いヤクザルの顔を見てみると口が変形しています。恐らくこれはサル同士による喧嘩か事故によるものではないかと思います。天敵がいないとはいえ集団生活するヤクザルの中でオスの個体が生き残っていくには相当大変なこともあったのではないでしょうか?

彼らは10頭ほどの群れで行動しており、威嚇が激しかったことからあまり人慣れしていない群れのように思いました。もしかしたら白いサルを抱えているためナーバスなのかもしれません。

撮影を続けていると仲間のサルが白いサルに対して「グルーミング」(毛づくろい)を始めました。群れの行動を見ていると白いサルはポジション的には群れの上位の方にいるようで心配せずともしっかりと生きていることも感じられました。

白いヤクザルは珍しいです。過去にちゃんとした記録もないかと思います。

僕も狙って撮影したのですが、あまりに注目され過ぎると群れの中での立場が変わってしまうかもしれません。このような奇跡的な個体が生き残ってきたこと、今は里の周辺にいることに感謝して、この子がこの先も平和に生き残っていけるようにそっと見守っていきたいところです。

関連記事一覧