屋久島をつなぐ「タンカン」

こんにちは!MBC屋久島支局の藤本です。
2月の屋久島はタンカン収穫の最盛期です。
タンカンは「スイートオレンジ」と「マンダリンオレンジ」の自然交雑から生まれた品種で、中国広東省が原産、香りと強い甘さが特徴の柑橘類。屋久島では昭和30年代から栽培面積が拡大し、今では全国1位の栽培面積を誇り、「ふるさと納税」でも人気の商品となっています。

タンカン・ポンカンを育てて50年になる相良春雄さん(85歳)
「やっと、ミカン農家になれた気がする」と言う相良さんに、これまでを振り返りお話を伺いました。

「最初は、生きていくために始めた。ミカン農家になれば、収入も良い。定年を迎えても収入はあるし、なにより楽しみが残る。周りは親の代から農園があって、自分のところにはなかった。
貧乏人にはミカンは無理だといわれ、悔しくて見返してやろうと、19歳で鹿児島の農家に10か月の研修に出た。その後、大阪に4年間出稼ぎに行き、屋久島に戻り、土地を買った。
いきなり農家だけでは食べていけないので、他の仕事をしながら、ポンカンの苗を植えていった。」
それから50年たち、今や約6000坪の農園に、タンカンとポンカンが毎年たわわに実っています。

「今は息子が継ぐと決めてくれて、何にも教えてないけど、責任を感じて頑張ってくれている。やっとミカン農家になれた気がする。」

「2代目は決まった。3代目からが難しい。後継者が決まらず、農園を手放した人も周りにたくさんいる。」

「荒れていく農地を見て『もったいない!』と何度も思った。
血は繋がっていなくても、熱い想いがあって、守り続けてくれる意思があるなら、
そんな人に託すのも選択肢の一つだと思う。」

タンカン農家2年目の尾登清彦さん(39)

百姓をしたい!夢を叶えるために、屋久島へ移住した。
運よく、後継者を探す農家が手放すことを決意した「タンカン畑付きの物件」を見つけた。

実際にタンカンの世話をしてみて、「こんなに手がかかるのかと最初は思った。毎日草刈り。」
「販路の開拓にも苦労した。SNSで販売している農家を参考にする中で、偶然見つけた産直サイトのおかげで、なんとか出荷することができた。
来年は『ふるさと納税の返礼品』としても登録を考えている。」

「近くのおじいが、世間話をしながら手伝ってくれたりする。
見守ってくれる優しさが身に染みます。」

今回お話を伺った方々が、みな口を揃えて仰っていたのは、
「一人ではやっていけない。周りのみんなに支えられて、ここまで来た。」

今年も子どもたちの声が、タンカン畑からあふれる。
タンカンは屋久島を繋いでいる。


(取材協力)
相良農園
おのぼり農園
まごころ果樹園
幼保連携型認定こども園 安房保育園


□ 記事・撮影:MBC屋久島支局 藤本新平

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