山下和輝さん/屋久島うみがめ館

フェリーや高速船が発着する屋久島の玄関口宮之浦港のほど近くに、屋久島西部の永田地区からこの春「屋久島うみがめ館」が移転した。
1999年から屋久島の西部永田地区で多くの観光客や研究者、ボランティアを迎えてきた「うみがめ館」の移転は島内で大きなニュースとなって駆け巡った。移転先は、レンタカーや土産物店、宿泊施設が立ち並ぶ島の中で最も賑やかなエリア。徒歩で行き交う観光客がふらりと入館することも増えた。

ウミガメが上陸する砂浜からは離れてしまったが、「ここで乗り合わせて浜に向かえば、車のヘッドライトによる光害など、環境への負荷も抑えられるのでは」と、新館長に就任した代表理事の上田博文さんは期待を寄せる。

上田館長の右腕として活動しているのが、学生スタッフの山下和輝さん。
愛知出身で鹿児島大学水産学部に進学した山下さん、入学当初はコロナ禍の只中。学生サークル「鹿児島大学ウミガメ研究会」に入会するも研修や調査もままならず不自由な学生生活を強いられてきた。昨年12月、2度のリモート開催を経て「日本ウミガメ協議会」主催の「日本ウミガメ大会」が沖縄県国頭村で開催。

当時、鹿児島大学ウミガメ研究会の代表を務めていた山下さんはこの大会で各地の関係者と交流。長期滞在でウミガメの現地調査を行う研修先として以前から興味を持っていた「屋久島うみがめ館」を選んだ。
「水産学部に進学した時点ではそれほどウミガメに関心を持っていたわけではありません。好奇心からサークルに入り、人との関わりの歴史などウミガメについて知れば知るほど、そのおもしろさにはまっていきました」と話す。

今春、思い切って大学を1年間休学、屋久島に居を移して活動に取り組んでいる。海外では「ギャップイヤー」と称し就職前の学生が旅やボランティアなど様々な社会活動を数カ月かけて行うケースが見られるが、山下さんもまさに「ギャップイヤー」。「進路や卒論など、自分の考えを整理して、じっくり考える1年にしたい」と意気込みを語る。

移転先の展示室は、これまでの2倍の面積。資料の整理やパネル製作、作業量に圧倒されながら実務経験が積み上がっていく。子どもの頃から博物館が大好きで、卒業後は大学院を経て、博物館の学芸員を目指しているという山下さん。
1年後、山下さんと「うみがめ館」がどんな風に進化しているか今から楽しみだ。

入館料は、大人300円、大学生200円、高校生100円、中学生以下無料。島民・出郷者割引あり、賛助会員は無料で入館できる。ボランティアスタッフや賛助会員も随時募集中。


屋久島うみがめ館
屋久島町宮之浦805-1
https://www.umigame-kan.org/
電話:0997-47-1800
開館時間:9:00~17:00、月休

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