エラブツツジを求めて

YAKUSHIMA FILMの松田です。今回は口永良部島のエラブツツジ(マルバサツキ)の話題をお届けします。

2015年の新岳の大噴火により山頂付近のエラブツツジは大きな被害を受けました。以来山頂付近は立ち入り禁止でしたが(2023年6月27日警戒レベル3に引き上げられ現在火口から2キロ以内立ち入り禁止)、6月中旬警戒レベルが引きあがる直前に8年越しのエラブツツジの開花を撮影してきました。

畠登山口付近の照葉樹の森では初夏の音、ヒメハルゼミの声を聞きながら登ります。登山口から600ⅿほど登ると景色は一変し火山と東シナ海のダイナミックな風景に。

屋久島も雲の中から顔を出します。このあたりからエラブツツジの大群落がピンクの花を満開に咲かせていました。

噴火の影響を受け生き残った個体。枯れ木もありますが過酷な環境を耐え新しい芽は伸び、たくさんの花が。

登山道は若干不明瞭でツツジの間の踏み跡を辿ります。上に行けば行くほどツツジの背丈は低くなり火山の荒野の中にツツジのピンクが咲き乱れ、ヤクシマシャクナゲに負けないほどの景色の中稜線を歩きます。

エラブツツジ=マルバサツキ。丸い葉っぱが特徴です。

古岳から新岳の稜線を歩くヤクシカのつがい。火山の火口付近に生きるシカたちの強さを感じました。

東シナ海に浮かぶ火山島のお花畑。九州は霧島や九重など火山の花の名山が多くありますがそれらにも引けをとらない素晴らしいエラブツツジの美しさとロケーション。

火山はエネルギーで溢れています。大地からあがる噴煙、硫黄の匂い、大地の熱、そのような環境に適応し大群落を作るエラブツツジやミヤマキリシマなどのツツジ科の植物たち。

GWのトカラアジサイ、初夏のエラブツツジ、豊かな海と行けば行くほど知らない口永良部島の魅力にハマっていきます。

自然は不変ではない。

屋久島でもこの数年の内に大雨でがけ崩れや増水で、苔の美しい谷や人を容易に寄せ付けない深い谷などが土砂で埋め尽くされたり、洗い流されたり、生まれ変わったように姿を変えました。

これだけ大規模な破壊はそこに人が住んでいれば『災害』となりますが、自然の中では当たり前で何かが絶えず破壊され同時に再生を繰り返しています。

エラブツツジも大規模な噴火で厳しい状況になりましたが、ときを越え再生しまた満開の花を咲かせています。

今回は撮影に行った3日後に警戒レベルが引き上げられました。天候含めここしかないベストなタイミングでの来島でした。

変わりゆくヒトや自然の風景、風土を『今、ここ』の感覚を大切に記録し続けたいと思います。


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