地に足がつかない陽気な風が吹きだしました

冬の里を彩っていたツワブキの黄色い花が受粉を終え、綿毛を飛ばし始めている屋久島です。

今年の立春は124年ぶりに2月3日だったそうです。国立天文台の観測によると、2021年の立春の瞬間は『2月3日の23時59分』。あと1分遅ければ例年通り2月4日だったことを知ると、今年の春の到来にはとても特別感を感じてしまいます。

そんな特別な立春を迎え、人が住む海岸付近は一気に気温が上がり、イネ科の草たちが眠りから覚め、葉を伸ばしはじめました。また木々たちの花芽や新芽も膨らみ、もう爆発寸前です。

三寒四温。季節はジリジリと行ったり来たりを繰り返しながらも、ある時気づけば一気に別の季節になっていきます。人類が刻んできた時代がそうであるように。

山岳エリアの雪もかなりとけてしまい、雪好きの僕としては少し寂しさもありますが、それ以上に春めいてきた里の陽気さに心が躍ってしまっています。春はどうして人の足をこうも地から離して、ふわふわと高揚させてしまうのでしょうか。過酷な雪山に行くモチベーションはすっかり無くなってしまいました。笑

また、人類が現在直面している閉塞感を打破するために島の友人たちがさまざまなアクションをとりはじめている現象も、よりワクワクさを倍増させてくれています。

屋久島人の春の動きを綴りたいところですが、今日はググッと自然にフォーカスして…

1月の下旬から咲き始めた寒緋桜が2月に入っていよいよ満開となりかなりの数のメジロが飛び回っています。メジロは甘いものが好きなようで、寒緋桜の花の中に顔を突っ込んでモリモリ蜜を食べています。

1月に花を咲かせ始めたビワは、着々と実を太らせています。写真右の方にまだ白い花が残っているかと思えば、写真の木の隣のビワはすでに新芽をひろげはじめています。一つの個体でさえ花の咲くタイミング、葉をひろげるタイミングが違うことを知ると、なんだかホッとします。生きものたちの生物多様性は、変態思考の僕に自己肯定感をもたらしてくれます。笑 南部では収穫のはじまったビワがあるそうです。同じ島でも所変わればですね。

毎年春は必ずやってきますが、その到来の仕方は毎年不規則にやってきます。だからこそ、マイペース、マイペース。自分の呼吸に意識を向けて、心から湧きでる直感にしっかりコンパスを合わせて。ゆったりと季節の移ろいを存分に味わいながら自分の描いたトレイル(山道)を一歩いっぽ歩いていきたいものです。

不規則に変化し続けるこの地球で、過度な規則をつくり、不安定に移ろう空間や多種多様なあらゆる生きもの価値観をテクノロジーの力で安定化ないし無視できる領域にまで持ち込もうとこれほど必死になっているのは、屋久島の森の中に篭っていると、人間だけのように感じてしまいます。森の中も海の中も生きものたちは皆、不安の中で不安と共に暮らしているのに、人間だけがぽっかり自然から離れて安心安全な空間をつくりあげてしまったような気がしてきます(実際は、安心安全ではないのですが)。

しかし、安心安全が大好きな人間であるはずの僕は、規則だらけの人間社会に息が詰まりそうになるとなぜか屋久島の予想不可能な混沌としたリスクのある自然に身を置くことを求めてしまうんですから、本当人間は不思議な生きものです。

人が避けたがる不安や不便さ、異なる価値観の衝突。これらを消してしまうことなく、その局面で発生する負と思われがちなエネルギーのウネリに上手く乗ってサーフィンしながらこの世を楽しんでいくことにこそ、究極の喜びがあるように思います。屋久島の山と海がそう教えてくれました。

スモモの白い花も咲き始めました。ここ数年、我が家のスモモの花のつきは悪かったのですが、今年はとてもいいです。どれぐらい結実するか楽しみです。

立春の前の日は節分。節分といえば豆まきですよね。豆をまいて鬼を退治するという風習です。昔から嫌いな風習ですが、最近我が子たちは鬼滅の刃という漫画に、かなり夢中になってます。まだ僕は読んだことがないのですが、この漫画も鬼を退治する内容のようです。なので節分の日に、鬼って一体なんなんだろうと心に湧いたので少し調べてみました。するとこんな説明を見つけました。

赤鬼は「過ぎた欲望」
青鬼は「怒りや憎しみ」
緑鬼は「不健康」

おー、鬼とは一人一人の心と体に宿っているものなのかっ! そして、豆は「魔滅」とも書くそうです。我が心体内に存在している災いを導く鬼を、豆の力を利用して滅亡させるということがこの風習の始まりだったのでしょうか。

だとしたら、豆を投げつけて一時的に鬼がいなくなったとしても、必ずまた何かの拍子で容易に心に発生してしまうのが人の性(さが)だと思うので、鬼は追い出すものではなく、心の我が家に招き入れて一緒にサーフィンしたり、山で豆を食べあったりするに限ります。その光景をイマジンすると、鬼滅の刃の怖そうな鬼より、高木ブーさんの緑鬼が頭に浮かんできて何か幸せな気分になってしまいました。ドリフ世代しか、わからないですかね。笑

兎にも角にも、屋久島の春の風景は僕を幸せな思考回路にさせ毎日が何だかふわふわとした状態で、常に酔っ払っているような毎日です。

ん、この文章はこれからどう展開させていったらいいのだろう。。。完全に迷宮入りしてきた感が。。。あっ、またフワフワしてきてしまった。。。

これで終わると訳の分からない締めくくりなってしまいますが、屋久島の自然の中はいつも訳がわからない混沌とした世界で、左脳が麻痺して論理的思考がぶっ飛んでしまいます。なので、こんな終わり方が春の屋久島的かなと右脳が直感したので、今日はこれでペンを置きたいと思います。笑 (MBCさんからの原稿の修正依頼がなければ…)

決して、島民全てがフワフワしているわけではありませんっ!。。。多分。笑

追伸、我が家でよく育つ魔滅は、大豆ではなくキヌサヤ。かわいい花が咲き出しています。

関連記事一覧