集落の平穏を祈願 鹿児島・屋久島で岳参り
鹿児島県屋久島の南部の集落、尾之間で山に祭る神に集落の平穏などを祈る伝統行事・岳参りが行われました。初めて参加した参拝者の思いなど取材しました。
岳参りは、屋久島で江戸時代ごろから続く伝統行事です。山の祠に祭る神・一品宝珠大権現に浜石、米、酒などを捧げ、集落の安泰などを願います。屋久島の南部・尾之間集落では毎年、この時期に代表者が参拝していて、集落から望む標高940メートルのモッチョム岳に3人の参拝者が向かいました。
参拝者のひとり、中野義久さん(38)です。中野さんは、屋久島警察署・尾之間駐在所の警察官です。普段は、地域の安全を守る中野さんは今回、集落の代表として初めて岳参りに参加しました。
(屋久島警察署・尾之間駐在所 中野義久巡査長)「コロナの収束と地区の安全を祈願して、しっかりお参りしてきたい。また警察としても、今まで遭難があったポイントなどをチェックして今後の備えとしていきたい」
登山道は世界自然遺産地域内にあり、足場などの整備は最小限です。また山頂までは延々と険しい坂が続きます。
(中野巡査長)「きついですね。よそ見をしていると、足を踏み外して滑落しかねないので気を付けていきたい」
遭難事故につながりかねない危険箇所をいくつも確認しながら、およそ4時間半。無事に山頂に到着しました。
中野さんたちは祠にお供えをして、深々と頭を下げました。
「日頃、尾之間区ならびに尾之間区民を見守っていただき感謝しております。今や新型コロナウィルスが世界中で猛威を振るっており、町や集落の行事も中止・縮小されてさみしい限りです。どうか一日も早く収束されますようお導きください」
初めての岳参りで代表を務めあげた中野さん。祠を前にして、警察官としての気持ちも新たにしました。
(中野巡査長)「神様に参った時に自然と背筋がすっと伸びるような思いで、警察官として地域の安全を守るためには、地域の皆さんの協力が必要だと思いますので、それも含めてしっかりお参りした。」
遠い山頂の祠を目指して人々が山を登り、山の神へ感謝の気持ちを伝える屋久島の岳参り。伝統に込められた思いは、今年も新しい世代へと受け継がれていきました。