池村千夏さん/deli cut・美容師
赤ちゃんからお年寄りまで、メール1本で駆けつける島の美容師
屋久島1周100km。まるい島の周囲に点在する集落をつなぐ、およそ100kmの幹線道路を行ったり来たり。メール1本で駆けつけてくれるのが、この春開業した出張専門美容師「deli cut(デリカット)」の池村千夏さんだ。
池村さんが、初めて来島したのは、2008年。
東京都の離島、新島出身の池村さんにとって、離島暮らしに特別な憧れはなかったが、ひと夏のリゾートバイトで訪れた島で、たくさんの思い出や友人ができた。いつのまにか屋久島は、自分にとって、もうひとつの「特別な島」となっていた。
それから7年、関東で美容師のキャリアを積んだ池村さんが新天地を求めたとき、たくさんの候補の中から心に浮かんだのは、あの夏を過ごした屋久島だった。当時の友人たちを頼って、屋久島に移住、島の美容室勤務を経て、独立に至った。
「出張スタイル」とあって、できるのはシャンプーの必要がないカットやヘアメイクのみ。カット代2,500円に、出張費が1,000円加算されるので、家族や友人とまとめて利用すると割安となる。
体が不自由な高齢者、子育て中のお母さん、多忙な自営業者など、依頼人はさまざま。眠っている赤ちゃんから、90代の車椅子のご婦人まで、出張スタイルならではのシチュエーション。美容室まで、わざわざ出向くことが困難な方々だからこそ、見せてくれるとびきりの笑顔に、これまで以上のやりがいを感じる日々だ。
ヘアドネーションにも賛同していて、31cm以上の長い髪を切った際には、希望すれば、メディカル・ウィッグ用に郵送もしてくれる。これまでに、池村さんを通じて、髪を寄付した人は20人ほど。島に、ドネーションの輪を広げている。
(取材:一湊珈琲編集室 高田みかこ)