中島拓也さん/たたみ職人
タタミの新しい可能性を島内外へ発信。
屋久島高校前の中島タタミ店 TATAMI GALLERYは、玄関全体が’’畳’’という文字になっている。扉を開けると、小さなギャラリーいっぱいに、清々しいイ草の香りが広がっていた。
店主の中島拓也さんは、屋久島出身のタタミ職人。高校まで屋久島で育ち、大阪の大学を卒業後、家業を継ぐため、京都にあるタタミの専門学校に入学した。帰島後は、お父様が営んでいた実家のタタミ店を継ぎ、島内外でタタミの普及活動に取り組んでいる。
休みの日は、奥様と息子さんの3人で、タタミの上でゴロゴロしているという中島さんの作品は、和室に敷き込まれた一般的なタタミだけではない。タタミ離れの現代人でも、手軽にタタミのぬくもりを感じることができる小さなサイズのタタミマットを製作したり、島の地杉を使って島内の家具職人とコラボした椅子は、屋久島町の新庁舎でも使われている。
専門学校時代は、京都市内のタタミ屋で、実習も兼ね見習いとして働いたというが、そこでは国内に留まらないタタミの可能性を目の当たりにしたと話す。
「タタミは日本文化を代表するひとつだと思います。海外の日本食レストランや博物館などで使用されるタタミの張り替えなど、外国を通してタタミを見れたことは、僕にとってとても新鮮でした」
“タタミと茶会” 和の空間で心を結ぶ
そんな中島さんは、ギャラリー横に設けられた小さな茶室で、月一回のお茶会イベントを開催している。もともと大学時代に趣味でお茶を習っていたというが、そのときの‘先生’というのが、大学時代から慕っていたカナダ人の英語教師だった。初めて先生の淹れたお茶を目の前にしたとき、緊張とリラックスが入り混じった不思議な感覚になったという。
「タタミの上に背筋を伸ばし座っているだけで、気持ちが落ち着きました。”和の空間”が醸し出す独特のものもありますが、何より、その先生がそこに居るだけでこちらまで居心地がいい、全て認められているような気持ちになりました」
ちなみに、イベントで出される和菓子は中島さんが手作りしたもの。奥様に味見してもらいながら、毎回、心を込めて作っている。
日本文化を守る。生産者を支える取組みも
現在中島さんは、「TATAMI-TO」という、全国17店舗のタタミ屋からなるチームで、畳の普及や原料のイグサ農家を支えるための様々な取り組みを行っている。
「実はいま、このままじゃ10年持たないと言われるぐらいイグサを作る農家さんが減ってきています。僕たちは、’’タタミと何か’’を組み合わせて商品を作ったり、イベントを開催し
たりすることで、タタミの商品価値を上げ、農家さんを守る取り組みを考えています」
様々な分野のクリエイターと組み、タタミの新しい可能性を探ったり、また実際にイグサ農家へ収穫の手伝いに行き、寝食を共にするという。
「国産のイグサで作られたタタミの中でも上質なものは、日に焼けてからが綺麗で丈夫なんです。色が明るくなり、次第に植物の美しい風合いが出てくる。それは、農家さんがひとつひとつ丁寧に選別しているからなんです」
日本の文化は、この小さな屋久島のなかでも、中島さんの手で守られている。
(取材:Written by 散歩亭 緒方麗)
中島タタミ店 Tatami Gallery
住所 | 鹿児島県熊毛郡屋久島町宮之浦2447-1 |
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TEL | 0997-42-1152 |
URL | nakashima-tatami.com |
https://www.facebook.com/Nakashima.tatami/ |