自然の恵みに感謝 屋久島・宮之浦 岳参り

MBCテレビ「MBCニューズナウ」2019年6月11日(火)放送

屋久島町の宮之浦集落で、住民が九州最高峰の宮之浦岳に登り、神に祈りを捧げる伝統行事・岳参りが行われました。

午前3時半。宮之浦集落にある益救神社には、白い装束に身を包んだ8人の姿がありました。集落の代表として目指すのは、九州最高峰、標高1936メートル、宮之浦岳の山頂です。山頂に祭られる一品法寿大権現に集落の繁栄と安全を祈ります。

江戸時代から盛んに行われるようになったという岳参り。屋久島の26集落のうち18集落にこの風習が残っていて、それぞれの集落で崇拝する山に登ります。海岸で体を清め、竹筒に浜砂を詰め込みます。浜砂は海の幸・塩を意味し、山に祀られる神に捧げます。

参加者のひとり、木滑黄平さんは、環境省・屋久島自然保護官事務所の職員で、今年の春に着任したばかりです。
(木滑さん)「宮之浦岳の登山も初めてで楽しみ、岳参りに参加できてうれしい」

午前6時ごろ、山頂に向かって歩き出します。登山道ではヤクシマシャクナゲの花が参拝者を迎えます。出発からおよそ3時間半たった午前9時半、全員が宮之浦岳山頂に到着しました。

宮之浦集落の岳参りは、戦後の経済成長の中で途絶えた時期がありました。しかし、自然の恵みへの感謝を神に伝える島の伝統を途絶えさせてはいけないと、宮之浦岳参り伝承会が15年前に復活させました。それから春と秋の年2回、集落の若手によって続けられています。

山頂の祠に浜砂と米などを供え、参拝者の代表が前年の秋の祈願を解く「願解き」と集落の繁栄などの願いを込めた「願掛け」の祝詞を読み上げました。

(木滑さん)「宮之浦にすむ住民のひとりとして、宮之浦地区の皆さんを思いながらお参りをしました。まだきて間もないのに、地域の行事に参加することができて、少しでも地域の中に暮らしているということが実感できてよかった」

(宮之浦岳参り伝承会 平國茂樹さん)「ここ数年は、若い方々も来られるようになった。なかなか1回2回では岳参りの意味とかわからないと思うが、少しでも、回を重ねる中で、年上の人と話したりすることによって、自然とか山とかに感謝する思いを少しずつわかってもらえたらいいなと思いますし、それをまた若い方が次の世代に伝えるということを続けていただければいいなと思います」

参拝が終わると、山頂付近のヤクシマシャクナゲの枝を、少し頂くのが慣わしです。シャクナゲには山の精霊が宿るとされ、山の神の霊力を集落に分けてもらう意味があります。山から里に下りた後、シャクナゲを益救神社や公民館にお供えして、岳参りは終わります。

神がすむ頂を目指し、山を登り、感謝を伝える屋久島の岳参り。伝統に込められた思いは次の世代へと受け継がれていきます。

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