岳参り

屋久島もコロナの影響を受けた一年となりました。10月下旬現在、少しずつではありますが観光業も回復しつつあります。

コロナの影響により色々なイベントが中止される中、私の住む宮之浦集落では、ある伝統行事の開催可否が話し合われました。それが「岳参り」です。屋久島の山には古来より神々が住むとされ、山岳信仰がいまなお残っています。「無病息災」も祈願するのが岳参り。こんな時だからこそ行く価値があると話し合われ、少人数編成で行うことになりました。

江戸時代に始まったとされる「岳参り」は集落ごとに行われます。昔は海からそびえ立つような山々で集落の行き来は難しい環境でした。今でこそ道路でつながっていますが、おのずと集落独自の文化が発展してく中、「岳参り」は多くの集落で続けられています。屋久島には24の集落があるのですが、登る山も違いますし、やり方もそれぞれの形で行われています。

私が住む宮之浦集落では、高度経済成長期に若者が島外に出てしまったため、一度その文化は途絶えていました。
しかし、15年ほど前に復活させ、一年に春と秋の2回、屋久島の最高峰である宮之浦岳(1936m)に参拝しています。

岳参り当日の朝、まずは浜へ行きます。「海の塩」を意味する砂をとります。

その砂や米、酒などのお供え物を持って、宮之浦岳の山頂を目指します。
長い距離を歩き、全員が山頂に到着するのを待ってから、お供え物を山頂の祠に供えます。そこで集落の代表である所願(とこーがん)が祝詞をあげ、集落の五穀豊穣、無病息災、商売繁盛、家内安全を祈ります。

一連の神事が終わると、下山する時に石楠花(ヤクシマシャクナゲ)の枝を折り、里に持ち帰ります。石楠花は山の神様が宿るとされており、集落の人や神社などに配られます。(屋久島の山は国有林で、石楠花などの植物を持ち帰ることは禁止されています。岳参りの時だけ特別な許可を受けています。)

時代で多少の変化はあるものの、岳参りという伝統行事は脈々と続いています。私自身も岳参りのような伝統行事を大切に生きていこうと思います。

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