永留嵯良子さん/学校法人光の子ども自然学園 あゆみの森こども園

「僕はここにいてもいいんだ!」子供の自己肯定感を自然から学ぶ

屋久島の南に位置する尾之間集落で、子供達の元気のいい声が聞こえる。

永留 嵯良子(さよこ)さん / 学校法人光の子ども自然学園 あゆみの森こども園

「自然界のように、カラフルで愛のある世界を!」
そう語るのは、”学校法人光の子ども自然学園 あゆみの森こども園”副理事長の永留嵯良子(さよこ)さん。結婚を機に東京から屋久島へ移住した。
それまでは IT 関連の仕事でキャリアウーマンとして全国各地を回っていたが、移住後には 2 人のお子さんの子育てに専念していたという。

しかし、数年後に御主人が他界してからは、島に残り1人で子供を育てた。その後は、前身の”尾之間クリスチャン幼稚園”の保護者として当時の執行部役員だったことがきっかけとなり、現あゆみの森こども園の設立に携わることに。もうすぐ開園 10 周年を迎えるという。

あゆみの森こども園のモットーは「主体性を持つ子に育てる」というもの。では”子供の主体性”とはどんな風に培われるものなのか?疑問に思っていると、永留さんがすぐに答えてくれた。

永留 嵯良子(さよこ)さん / 学校法人光の子ども自然学園 あゆみの森こども園
「大人が”答え”へと誘導しないように、子供達自身で答えにたどりつくまで、根気強く待つということです」
たとえば”どうすれば運動会で相手チームに勝てるのか?”、“教室で屋久島水族館を作りたい!”など、子供達がそれぞれの知恵を出し、話し合いで決めていくという。

「子供達は、どの子の意見も”大事な意見”として話し合います。ひとつずつ解決していく子供達の姿を、近くで見守っている私達スタッフは、毎回”子供の育ち”を目の当たりにし、感動をもらっています」

永留 嵯良子(さよこ)さん / 学校法人光の子ども自然学園 あゆみの森こども園

自然が教えてくれること

あゆみの森こども園は、屋久島の自然を活かした”森の活動”に取り組んでいる。そのベースとなるのは、スウェーデンの野外活動推進協会が開発した”森のムッレ教室”の理念。自然の営みを、子供達がそれぞれの五感で受け止めることを目的とし、屋久島環境文化研修センターのインストラクターなどの協力を得て、野外活動を行っている。

「子供達は森に入ると様々な発見をします。葉っぱの形や臭い、去年の葉っぱはどこへ行ったの?何故臭い葉っぱがあるの?など。次第に、木や葉っぱが生き残るために"臭いもの”に変化し、それが土になり新しい芽が生えるときの養分になるんだと、”自然の循環”を感じるようになります。

すると『自然はお友達なんだな。外に出るのは楽しいな』などと、その後の自然感覚を養うことに大きく影響するのではないかと感じています」

永留さんの愛読書である「センスオブワンダー(レイチェルカーソン著)」のように、子供達と同じ目線で自然に触れると、日々の小さな変化にも喜びを感じるという。

永留 嵯良子(さよこ)さん / 学校法人光の子ども自然学園 あゆみの森こども園

島の地杉の間伐材を使用し、”手きざみ”と呼ばれる日本伝統の家造りの手法で作られた園舎に入り、1、2 歳の子供達のお部屋をこっそり中を覗いてみると、お昼寝の真最中だった。木のぬくもりに包まれた教室で、お兄ちゃんお姉ちゃん達に、トントンされながらぐっすり眠っている。

「あれはトントン当番と言って、子供達が自ら望んで小さい子供達のお世話をするんですよ。これも子供達が主体性を持つということの一つです。下の子達は、そんなお兄ちゃんお姉ちゃんに憧れを持って自分もこうなりたい!と思うんです」

永留 嵯良子(さよこ)さん / 学校法人光の子ども自然学園 あゆみの森こども園

「自然の中には、居なくてもいい存在がひとつもないように、『僕(私)は、ここに居てもいいんだ』と思えることは、子供達の自己肯定感に繋がっていくと思っています。でも実はこれ、何より私自身が、誰かに言って欲しかったことだったんです。
今まで私は孤独の中で生きてきたような気がしますが、これからは自然界のようなもっとカラフルな世界で生きたいですね。それも全部屋久島の自然が教えてくれたことです」
快晴の空に突き抜けるモッチョム岳に見守られながら、今日も子供達の笑い声が響いている。

(取材:Written by 散歩亭 緒方麗)

学校法人光の子ども自然学園 あゆみの森こども園

  • 住所:鹿児島県熊毛郡屋久島町尾之間332-1
  • TEL:0997-47-2226

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