日高晋作さん/茶園・お茶農家

屋久島の澄んだ空気で育ったお茶が美味しい。茶園の2代目夫婦が手がける、身体に優しい紅茶を商品化へ。

山々の裾野に広がる新緑の茶畑。今年もここで日本一早い茶摘みが始まる。

“お茶の好香園”の日高晋作さんは、お父様が営む茶園を引き継ぐ2代目として、茶畑の管理や製造など忙しい日々を過ごしている。
中学まで屋久島で育ち、高校は鹿児島市内へ。大学は東京農業大学で、農業に関する全般を学んだという。卒業後、お茶の本場である静岡県富士市のお茶農家で1年間研修し、さらに半年間鹿児島県の野菜茶業研究所にて研修を重ねた。そんな勉強熱心な晋作さんだが、小さい頃から家業を継ぐと決めていたのか尋ねると、意外な答えが返ってきた。
「僕は小さい頃、家の仕事の手伝いから逃げ回ってましたね。きっと兄弟のなかでも一番やってないと思いますよ!」

晋作さんには、奥様の春気(はるき)さんとの間に、8か月になる息子さん”ふうきくん”を授かった。その名前は、紅茶品種の”紅ふうき”から名付けたのだそう。実は好香園では、この春、これまでの緑茶に加え3種類の紅茶の商品化を予定している。栽培から製造は晋作さん、商品化は春気さんと、夫婦で試行錯誤しながら作り上げた紅茶が、春らしい陽気を纏った可愛いらしいパッケージに包まれて、もうすぐ市場(しじょう)に並ぶ。

「僕にできない部分を、奥さんがやってくれて助かりますね。消費者が求めるものに対しては、やっぱり女性の方が敏感ですよ。奥さんがリサーチしたものをフィードバックして、僕が生産に反映させるという、2人で協力し合いながらやってます」

お茶は、同じ茶葉だが製造の仕方により、”緑茶”や”ウーロン茶”などに変わる。その中でも、最も発酵が進んだ”完全発酵”されたものを紅茶と呼ぶ。ちなみに晋作さんは、研修生時代に作っていて一番面白かったのが紅茶だったという。空気と触れることで発酵が進む”酸化発酵”が、茶葉の味や香りを引き出す鍵となるが、屋久島の大自然の空気を吸ってじっくり発酵された好香園の紅茶は、屋久島らしい豊かな味わいに満ちている。しかも、茶葉は無農薬で育てたもの。全ての人に安心して飲んでいただけるという。

「お茶には、様々な効果があると言われています。健康志向の方はもちろん、急須さえない家庭も多い現代人の普段の食生活にも、気軽に取り入れて欲しいです」(春気さん)

茶葉と一緒にすくすく育ってほしい

屋久島のお茶農業の歴史は、30〜40年ほどだという。日本のどこよりも早い”はしり新茶”の生産地である種子屋久地方は、他の地域に比べて茶葉の収穫回数が多い。寒暖差がお茶のの旨味を引き出すため、屋久島では北東部の山沿いにお茶畑が点在している。豊富な水と、燦々と降り注ぐ太陽、雄大な山々をバックに育つ好香園の茶葉たちは、葉の一枚一枚が空に向かって立ち伸びて行くかのように、健やかに育っている。

「紅茶の紅ふうきと一緒に、この子もすくすく成長してほしいですね」

突き抜ける青空のなか、息子ふうき君を抱きながら、夫妻はそう語った。かつて晋作さんがそうだったように、いまは家業を継ぐなんてどこ吹く風だが、いつかこの新緑の茶畑にふうき君が立つ日が来るかもしれない。

(取材:Written by 散歩亭 緒方麗)


  • name:好香園
  • 住所:鹿児島県熊毛郡屋久島町安房
  • more:ぽんたん館 0997-47-2557 / レンタルの山下 宮之浦店 0997-42-3035 で購入可能

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