屋久島シャクナゲとサツキ

YakushimaFilmの松田です。

いよいよ屋久島も梅雨入りです。梅雨入り前の5月後半から6月前半にかけて稜線部や標高の高い森の中ではシャクナゲが、沢沿いではサツキが見ごろをむかえていました。

民謡「まつばんだ」の歌詞には『屋久の御岳のシャクナゲ花よ 年中蕾んで一度咲こな』と謡われています。この歌詞の通り、春の終わりに花を咲かせるシャクナゲは梅雨時期の雨で新芽を伸ばし、夏には花芽をつけて翌年の開花を待ちます。冬の奥岳で厳しい風雪に耐えながら、じっと春を待つ蕾の辛抱強さに人間は到底敵う訳もなく、山岳部に生きる植物のたくましさを感じます。

梅雨時期の花ですが、雨が塵を洗い流してくれたあとの晴れ間には、遠くはトカラ列島や霧島の景色とともにシャクナゲを楽しむことができます。九州最高峰の離島ならではの特権です。

昔は女人禁制だった屋久島の御岳。里からは拝むことのできない山々を神とし無病息災、五穀豊穣を祈りシャクナゲの時期には岳参りを行ってきました。その際には、海で砂を竹筒に詰め山頂の祠にお供えします。これは山(神)が風化し川を伝って海に流れ着いたものをお返しするという意味合いがあります。そして、その代わりに御岳に生えるシャクナゲの蕾のついた枝を持ち帰り里に奉納します。そして愛する妻や女性にこっそりとシャクナゲを持ちかえりプレゼントしていたというロマンチックな話もあります。

ヒマラヤ原産のシャクナゲは、屋久島の場合おおよそ標高1,300m以上の山岳部に自生しています。とりわけ稜線部の美しさは言葉にできないくらいです。今でこそ標高1,340mの淀川登山口まで道路が開通し、さらにはドローンで鳥の目線から花を楽しむことができますが、昔は今以上に特別な存在であったに違いありません。剝き出しの花崗岩にしがみつき嵐や雪に耐える強さと美しさを昔の人々はどんな風に見ていたのか。美しさを簡単に楽しめる半面便利さが奪ってしまったものを想像してしまいます。

稜線の花がシャクナゲであれば、そこから流れ落ちる水の集まる沢にはサツキが咲き乱れています。サツキは渓流に特化した植物で、流線型の小さな葉・柳のようなしなやかな枝は増水時に水の流れに抗うことなく受け流す構造になっています。一雨まとまった雨が降れば、清流は牙を剥き沢にある万物をなぎ倒し流してしまいます。そんな他の植物が育ちにくい環境だからこそ、水流と共に生きるサツキは大きな群落を作り得たとも言えるのではないでしょうか。

特にすごさを感じるのが、水没時には花を閉じるということです。ドローンの映像に出てくるサツキは大雨の後に撮ったもので、水没していたため花が閉じています。しかし、数日後に見に行ってみると花は開きまた満開をむかえていました。シャクナゲとは違う環境ですが、サツキも同じく厳しい屋久島の環境に耐え生き抜いてきた植物です。

黒潮と梅雨前線の接近するこの時期は、湿度と雨が多く厳しい環境にはなりますが、御岳ではシャクナゲが、谷にはサツキが海ではウミガメがそれぞれの命を全うし次世代へ生命のバトンを繋いでいます。そして、そのような美しくあるいは大きな生き物の陰にはもっとたくさんの生命のバトンが紡がれています。
今回、写真や映像を撮り、屋久島の美しさを再確認できました。
ぜひ高画質でお楽しみください!

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