辻美穂さん/森林浴ガイドと宿泊施設「森呼吸」

いくつになっても、人生は思わぬ方向に転がって、楽しい気持ちは、さざ波のように伝わっていく


この冬、屋久島で101人のダンサーが一堂に会したダンスイベントが開催された。

ストリートダンスやジャズダンス、K-popのダンススクール「Kou-Dance」とブレイキンを指導する「海鮮丼クラブ」の合同イベントで、500人超の客席は立ち見も出るほどの大盛況ぶり。この日を持って、「Kou-Dance」は解散、7年の歴史に幕を下ろした。

屋久島にダンスの楽しさを伝えてきた「Kou-Dance」の主催者が、今回紹介する辻美穂さんだ。
生まれてからずっと超肥満児だったという辻さんは、妊娠出産育児で激痩せ。ママ友が体力作りのためにと誘ってくれたのがダンスを始めるきっかけだった。そこから18年。親子でダンスに明け暮れた。

子どもの独立を機にダンスを引退、離婚して、単身屋久島へ移住。
ダンスとは無縁の生活と思っていたところ、ちょうど島でダンススクールが開講され、体験レッスンに参加することに。
その教室は、講師の引越しにより数年で解散になったが、「ちゃんと習ったことはないけれど、ダンスの楽しさをみんなに伝えたい」という講師の言葉に衝撃を受けた。
私もダンスが好きな気持ちは誰にも負けない。「私なんて……、私が教えるなんて……」と、言い続けて一生を終えるんだろうか。故郷の恩師や仲間とのあの時間を無かったことにしたくない、という気持ちが沸き上がり、教室を立ち上げた。
最初の半年の教室の生徒数は、多くて3人。誰も来てくれない日もあり、帰り道、泣くのを我慢して歩いたという。初舞台は、立ち上げから1年4カ月後、この時には大人6人子ども6人に増えていた。

それから、あれよあれよと生徒が増え、「教えたい」「経験者なんです」という講師もひとりふたりと集まってきた。
「私にはできないことが多すぎて、多彩な仲間に恵まれた」と、順調に教室は育ってきたところに、パンデミックが訪れた。
「コロナの時はとても苦しかったですね。レッスン自体もオンラインを試したり、長期お休みにしたり。舞台がことごとく中止された屋久島で、発表の場を作ってあげたくて、自主公演も2回しました」と当時の苦労を振り返る。

解散後は、富田てつろうさんの「T-space」、李さやかさんの「MU4 K-POP DANCE」、樫村咲子さんの「Bloom Dance」と、3人の講師が独立、「Kou-Dance」74人の生徒のうち希望者は、それぞれの講師のもとでダンスを続けられることになっている。

辻さんにも、第3の人生が待っている。
これまで、ダンスと並行して続けてきたで森林浴ガイドと宿「森呼吸(しんこきゅう)」。日帰りツアーとダイエットリトリートをメインに活動していく。
また、島民対象のパーソナルトレーナーとして、ひきつづき「健康でイキイキした人生を応援」していく予定だ。
「『健康に生きる』ために。『食べること』『体を動かすこと』『自然と共に在ること』の3つが大切。これからの私の人生は、屋久島の森で、お客様の人生を輝かせるためのお手伝いができれば」。

いくつになっても、人生は思わぬ方向に転がっていく。それを心から楽しみ、惜しみなくシェアする辻さんの活動は、さざ波のようにたくさんの島民に伝わっていく。


■森呼吸

屋久島町楠川905
https://shinkokyu-yakushima.jp/

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