シャクナンガンピに会いに天空の谷へ
ヤクシマフィルムの松田です。今回はシャクナンガンピという花を紹介します。
シャクナンガンピはジンチョウゲ科の低木で別名ヤクシマガンピといい標高の高い奥岳にのみ分布しています。そもそも雁皮(がんぴ)というのは三椏(みつまた)、楮(こうぞ)と並ぶ和紙の材料であり、雁皮を混ぜたものは墨が滲みにくく高級材として重宝されています。
雁皮は成長が遅く、栽培も難しいため野生のものを利用するしかなくシャクナンガンピもまた他の雁皮と同じく乱獲により個体数が減り、絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。
屋久島の登山道でも黒味岳付近には残っているもののメインの登山道ではあまり見ることはありません。人が少ない登山道や沢の中では多くの個体を見ることができます。
梅雨明けのわずかなタイミングで見られるシャクナンガンピにタイミングを合わせ会いに行く気持ちはまるで中々会えない恋人に会いに行くかのよう。はやる気持ちを抑え秘密のポイントに向かいます。
花の少ないこの時期にほんのりと甘い香りを漂わせる花は多くの虫たちの集会場になっていました。
谷の中には他にもヤクシマショウマやヤマボウシが咲いており。賑やかな夏を迎えていました。
淡いピンクと可愛らしい形が特徴のシャクナンガンピ。実はピアノ連弾にシャクナンガンピという曲があり(レ・フレール作詞・作曲)、これは屋久島からインスピレーションを受け、山岳に咲くシャクナンガンピの孤高の美しさを表現した曲になっています。
美しくも力強く岸壁や岩場に咲く花は崇高さと穏やかさが入り混じり、そこに生きる物たちのよりどころとなる。人目につかない谷に咲き、ほとんど人の目にも触れられず厳しくも美しい世界の中で花として生き、命をまっとうする。
そんな命の瞬きにタイミング良く出会えたことに感謝し、来年もまた出会えることを楽しみに写真家としてこの一年を生きていきたいです。