田中俊蔵さん/YAKUSHIMA FILM 発起人
自然が創る美しい奇跡の瞬間を、世界へ。
コロナウィルスが世界を席巻し、地球上の経済活動が強制停止されている今。屋久島の豊かで美しい大自然が魅せる奇跡の瞬間を、世界へ向けて発信する写真家チームがいる。
屋久島在住の6人の写真家兼自然ガイドからなる映像組織”YAKUSHIMA FILM”。発起人である田中俊蔵さんは2008年に家族で移住し、自然ガイドをしながら、これまで屋久島の様々な表情をカメラに収めてきた。田中さんが声をかけて集まったメンバーの写真が掲載されている、YAKUSHIMA FILMのホームページでは、屋久島の多様な自然の写真に、それぞれ写真家の言葉が添えられ、世界に向けて発信されている。
実は現在、コロナウィルスの影響で入島自粛制限のため、メンバー6人ともガイドとしての仕事は全く入っていないという。しかし不思議なことにメンバーの表情は明るい。もちろん”不安が無い”と言えば嘘になるというが、同時に「仕事が少なくなったからこそ得た新しい価値観がある」と語る。
「屋久島に移住してから21年目ですが、こんなにゆっくり屋久島の春を堪能できるのは初めてです。毎日見慣れている自然の景色がすごく美しく感じたり。新鮮ですね」
「僕は、東日本大震災の年に屋久島に移住しました。それまで常にいろいろなリスクが隣にありましたから、今のこの状態を静かに受け止めることができています」
「これは与えられた休みだと思って、これまで撮った写真の整理や、土いじりや魚を獲ったりと、次の撮影に備えて今を楽しんでいます」
「みんなガイドでありながら写真家としても活動しています。普通ならライバルみたいな存在にもなるはずですが、一人ひとりに独自の世界観があり、僕はみんなの写真が好きなんです。これまで、それぞれ1人でやっていたことを、みんなで協力してやって行こうと繋がったら、自分の想像を遥かに超えた世界が広がった感じですね」
「ガイドの仕事がなくなって、僕はいま家族で畑を耕しています。自然の理にかなった生き方をすれば大丈夫かなって」
「とにかく命さえあればなんとかなります。僕達の仕事は、自然が相手ということもあり、安定している職種ではありません。だからこそ経済的な膜がベロって剥がれたような、こんな状況でも臨機応変に動けるかもしれません」
「自然の中では、全て学びに変えないとやって行けないから。もうやるしかないという感じですね」と、笑う田中さんやメンバーの口にする言葉から、この状況を甘んじて受け入れる、自然の中に身を置く職業だからこそのスケールの大きさが垣間見えた。
“本物が残る島”、写真で伝えられること
YAKUSHIMA FILMのメンバーは言う。
「屋久島にはこの地球上の”本物”が残っています。街頭の明かりが全く無い暗闇から見える満天の星や、森の中で出会う剥き出しの動物の死骸、自然の持つ理不尽さを含めて、本土で育った僕達にとってこの島は、初めて生々しい”リアル”を感じた場所です。”本物”の中に人が住み、文化が生まれ、歴史が残っている。でも時々、この島の”リアル”を、写真が超える瞬間があるんですよ。それを僕らは1人でも多くの人に伝えたいんです。
僕らはまるで、屋久島の自然みたいなんです。多様な個性だけど調和している。世界が求めるものに対して、生き物みたいに変わりながら、ヨボヨボに年老いても、この活動を持続させていきたいです。そして、次の世代に繋げていけるような仕組みを考えていきたいです」
今、こんな時代だからこそ、屋久島から伝えられる”本物”がある。
(取材:Written by 散歩亭 緒方麗)
YAKUSHIMA FILM
- 鹿児島県熊毛郡屋久島町安房
- 080-8357-3308(事務局・田中)
- yakushimafilm.com
- https://www.facebook.com/Yakushima-Film-102302678100314/