山下敏正さん/登山用品レンタル山下・安房リバーカヤック
今は無き山奥にあった小杉谷集落で育った登山用品レンタルのオーナー
縄文杉の登り口安房集落の県道沿いに立つ深緑色の看板に赤い“OPEN”の文字。ログハウス風の建物は登山用品レンタルショップ“レンタル山下”。店内には、ザックや登山靴、そして雨具などのアウトドアのレンタルグッズが並ぶ。
オーナー山下敏正さんは、屋久島安房集落の出身。中学まで屋久島で育ち、高校と就職を経て、22歳の時にいったん帰島。その後もう一度島を出て、45歳の時に帰島した。そこから10年間、山とカヤックのガイドを経験した後、登山用品専門の“レンタル山下”をオープン。
同時にカヤックガイド業も行っている。
小さい頃から島の自然で遊ぶのが当たり前だったという山下さん。営林署勤務のお父様のお仕事の関係で、山奥のトロッコ道の途中に存在していた集落“小杉谷の石塚”で育った。
「昔はね、川でウナギを捕ったり、山では鳥の罠をかけたりして遊んでた
。どこの家でもそうだったけど、それが晩御飯のおかずになるんだからみんな必死だったよ」
“遊び”と“生きること”が直結していた時代。しかしそれも東京オリンピックを機にテレビが普及し、給食ができ、道路は舗装されて高度成長期の波とともに島の子供たちの中から“生きるための遊び”がなくなっていったという。
「昔はトロッコ道の先に夢があった」と語る
昔は自然のしくみやサイクルを考えることもなかったが、一度島を出て帰島し、ガイド業をしながら客さんに自然のことを説明をするうちに、「人間の生き方も分かった気がした」と語る山下さん。
「例えば、日は東から上って西に沈み、水は高から低へ流れ、葉っぱは表で光を受け裏で製造するでしょ。そんな自然のしくみに気付いたとき、あぁこれに逆らっちゃいけないな、と思ったの。逆らおうとすると、エネルギーがマイナスに動きそれがストレスになる。人間も同じじゃないかなぁ」
山下さんは毎日、朝起きたら太陽を見て、寝る前には夜空を見上げるようにしている。そうすることで身体がリセットされ、1日に感謝することができるそう。
毎日書いている「ありがとうノート」
山下さんは、お客さんや島内の知り合いに人生相談されることも多いそう。
「島に帰ってきて自然のサイクルのままに生きると、不安や不満が無くなって毎日めっちゃ幸せだよ」
そんな言葉が聞きたくて、今日も誰かが“レンタルの山下”のドアをくぐる。