川東竜馬さん/トビウオ漁師
漁師歴22年!四代続くトビウオ漁師の家に生まれて。
漁師の朝は早い。早朝5時、トビウオ漁の漁師たちが続々と安房集落の港に集まる。漁師が船に飛び乗ると、海の向こうから昇る朝日に向かって、一隻、また一隻と船が港を出て行った。
四代続くトビウオ漁師の家に生まれた川東竜馬さんは、小さい頃からずっと“漁師になる”と決めていたという。
屋久島高校を卒業すると、家業を継ぐためすぐに漁師の道に進んだ。現在は、漁師歴22年のキャリアが認められ、2艘1組で行うトビウオ漁船“なつき丸”の、片船の船長を務めている。
そんな竜馬さんが初めて船に乗ったのは、10歳のときだった。船長を務める父親の船に、友達数人で乗り込み、トビウオ漁に同行したという。海に出て、船酔いした子供たちの横で、汗をかきながら黙々と作業をする漁師たち。無骨な男の世界で生きる、大人たちの背中を見て育った。そんなある日、いつものように船酔いしている竜馬さんに向かって、父親が「船に酔ってるなら、海に飛び込め」と叫んだという。言われるがまま海に飛び込んだのが、初めて大海原に身を任せた瞬間だった。「海は深くて怖かった」、大人になるにつれ次第に怖さはなくなっていったという。
安房港は、トビウオの漁獲高全国1位。昔は、“漁師が元気だと安房が賑わう”と言われるほど、トビウオ漁師が島の港町の歓楽文化を支えていた。しかし、年々水揚げ量の減少や漁師の高齢化が原因で、現在、トビウオ船は8組のみ。船主会長を務める竜馬さんも、その衰退化に歯止めをかけようと、思考錯誤している。
約50種類いると言われるトビウオは、水面を飛ぶことから、魚群探知機に写らないため、その日の自然条件を読んだら、あとは船長の勘が頼りになる。
「漁師はよく’’海は、出てみないとわからない’’と言う。獲れると思って網を打っても全く獲れなかったり、逆にいないと思っていたとこに魚群があったり。でもそんな自然相手の仕事だからこそ面白い。」これまで一度も船を降りようと思ったことはないという。
「爺ちゃんや親父から、“漁師は、一生、一人前というのはない”と言われてきた。その日その日で学ぶことが変わる。自然も同じ日は1日もないから、その日その日で判断も変わる」、朴訥とした口調から、実直な人柄が滲み出ている。
風がやみ、海が凪たら、船が出る。竜馬さんの朝は、明日もきっと早いのだろう。
(取材: Written by 散歩亭 緒方麗)
トビウオ漁漁船“なつき丸”
住所:鹿児島県熊毛郡屋久島町安房136(屋久島漁協)
TEL:0997-46-3116(屋久島漁協)