土持佑太さん/屋久島黒豚ファーム
のんびりとした自然の中で育った屋久島黒豚を!
屋久島の県道を南へと車を走らせると、海と山に挟まれたのどかな田園風景が広がっている。
島の中でも比較的暖かい気候が続く湯泊集落を過ぎて、県道から海に向かい細い道を降りて行くと、大きな豚舎が現れた。
「豚はやんちゃな動物で、子供みたいで可愛いんですよ。豚舎はまるで保育園みたいです」
笑顔でそう話すのは、屋久島黒豚ファームの土持佑太さん。
その端正な出で立ちからは想像つかないが、屋久島高校卒業後20歳から養豚業一筋だという。現在は奥様と 2 人で豚のお世話をしており、今年で15年が経つ。
土持さんは、隣町の中間集落の出身。養豚業は祖父母の代から30年以上続く家業だそうで、小さい頃から養豚を生業とする家族の姿を見て育ったという。
現在は、常時 1500 頭ほどの黒豚バークシャー種が飼育され、約90日かけて育てられた子豚は、県内の養豚農家へと出荷される。
黒豚は適応能力が高いと言われているが、屋久島は自然環境が変わり易いため、豚舎の気温管理や衛生環境にはとても気を配っているという。
「豚が健やかに育つには、やはりストレスを感じないような環境を作れているかがとても大切なことだと思います」
豚にとってストレスのない環境作り
屋久島黒豚ファームの豚舎の床には、屋久島の地杉のパウダーが敷かれている。
豚は”掘る”習性があるため、床いっぱいに敷き詰められた地杉パウダーを掘ることが、まずひとつ大きなストレス緩和になる。
そしてもうひとつ、豚が清潔でいられるために一役かっているのが微生物の力。
地杉パウダーの微生物が、排泄物を分解してくれるため糞尿処理にも役立っており、豚舎を常に清潔な状態を保つことができる。
杉の匂いはリラクゼーション効果もあるため、天然のアロマテラピーのような効果も期待できるかもしれない。豚がストレスを感じない環境作りにこだわっている。
「屋久島には養豚農家が少ないこともあり、病気が広がりにくいのでその点は安心ですね。豚は一頭ずつ個性が強いので大変なこともありますが、毎日元気に育ってくれている姿を見るとホッとします」
屋久島黒豚ファームの精肉は、主に神奈川県の生協グループに出荷されている。土持さんも毎年2月に神奈川まで出向き、店頭に立ってお客様の声を直接聞ける機会を設けているのだとか。
「お客様の『美味しい』という声を聞くと、改めて頑張らなきゃなという気持ちになります」
土持さんはいま、産直の屋久島産黒豚としてのブランディングを模索中だという。屋久島の澄んだ空気と地杉の香りをたっぷり吸って、のびのびと育てられた黒豚はさぞ美味しいだろう。
(取材:Written by 散歩亭 緒方麗)
屋久島黒豚ファーム
- 住所:鹿児島県熊毛郡屋久島町湯泊245-59