デロ・グリシャムさん/島の穏やかな時の流れを感じながら手がける木工作品

デロ・グリシャムさんに会うために楠川集落にある自宅兼アトリエを訪ねた。車から降り、玄関をノックすると、家の奥からピアノの音が聞こえる。しばらくすると扉が開き、デロさんが中へと迎え入れてくれた。

「屋久島に来てからずっとここに住んでいます。ここは静かでいい。子供達が成長して島を出てからは、妻と2人で暮らしているんです」

30年前に熊本から移住し、ピアノ講師である奥様との間に2人のお子さんを授かったという。

デロさんは、地域の子供達に英語を教えながら、木工作家として様々な作品を手がけている。アトリエの棚には、蓋付きの小物入れや印鑑ケースなど、小さくても存在感のある作品が並ぶ。そこに混じって置かれているオールドアメリカンを彷彿させる雑貨や、島で昔使われていた農具などに、デロさんの人生の背景を垣間見た気がした。

「私はアメリカ人の父と日本人の母との間に生まれ、軍人だった父の仕事の関係や、私自身も昔は米軍に所属していたことから、これまで様々な国で暮らしてきました。屋久島に来た理由は、昔の日本がまだ残っていると感じたから。実は小さい頃、東京の高幡不動尊の近くで育ったんですが、あのときの原風景と屋久島が重なったんです」

静かなアトリエで木と向き合う日々

まるで、この場所だけゆっくりと時間が流れているようなアトリエ。デロさんにとって木と向き合うことは、きっと尊い時間なのだろう。ゴロンと横たわった生木や、壁側の棚に整然と並べられた未完成の作品たちが、これまで木と共に過ごしたきた日々を映している。

するとデロさんが、棚の奥から大事そうに何かを持ってきた。そっと見せてくれたのは今ではもうあまり見なくなった”櫛かんざし”。京都のお客さんからの注文を受けて作ったのだという。まずは木を選ぶことから始まり、しっかり時間をかけて作りあげた作品だ。これは、鹿児島県特産品コンクール工芸品部門にて理事長賞を授けられた。

「木工はほとんどが独学です。屋久島の森にはいい樹が沢山あるから、その木の良さが活かされる作品になれるように考えながら作ります。アカガシ、イスノキ、ツゲ、クロカキなど好きな木は沢山あります。例えば、木の独特の模様などは菌が入って色が変わるんですが、それをどう活かし面白いものにするのかを考えるのも、楽しみのひとつです」

そんなデロさんの作品は、屋久島町ふるさと納税返礼品や、宮之浦港近くの屋久島環境文化村財団に展示販売されている。屋久島の穏やかな時の流れを感じる静謐な世界観が表現されている。

  • (name)デロ グリシャムさん
  • (住所)鹿児島県熊毛郡屋久島町楠川
  • (備考)作品は屋久島環境文化村センターにて販売

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