ミツバツツジがもたらしてくれた幸福感
こんにちは!YakushimaFilmのシュンゾウです。
ゴールデンウィークを終えた屋久島の奥岳は、前回寄稿したアセビの花が終わり黄金色の新芽を広げ始めました(上の写真)。新たな高山植物たちの開花もはじまり、ぐんぐん山が華やかになってきています。
今年はヒメコイワカガミの花がよく咲いてます。山口県から来た方が、とても小さいと驚いていました。屋久島の高山では鹿が好んで食べる種が小型化するという研究成果が最近発表されましたが、この種もそれに当てはまるのかもしれません。
そして、今回最後に紹介するのはミツバツツジです。15年間、奥岳の植物を観察してきて、今年のミツバツツジの開花はトップクラスに見事でした。これほどまでに咲きほこることはもうないのではないかと思ってしまうぐらいでした。その様子はまた映像でお伝えしたいと思います。
これまでたくさんのミツバツツジを撮影してきましたが、その中でとても気に入っている過去の写真を今日は紹介したいと思います。
これは、2013年に撮影した杉の枯木に着生して毎年咲いていたミツバツツジでしたが、撮影した数年後に、剥がれ落ちてなくなってしまいました。
2024年現在の写真。万が一ミツバツツジの種が再び着生したとしても、あの見事な開花劇は僕の人生においてはもう二度と見ることはできないでしょう。
山に身を置いていると人の一生はなんと短いことか、と実感します。
これは決してネガティブなことではない感情で、今年のようにこれほどまでにミツバツツジが咲くことはもう僕が生きているうちにないだろうなと強く思えるからこそ、山での一瞬一旬がとても尊く有り難く思えて幸せな気分に包まれます。そして、その幸福感は里に降りても持続して、日々の野良仕事で出会う虫や米、野菜、家族に対してたまらない愛おしさが芽生えてきます。
毎日が本当にありがたいなあ
儚い有限の命を痛感できることは
怖いことではなく感謝の念が生まれる尊いこと。
高山植物の短すぎる花の全盛期を予想して山に入り、その風景に作用するさまざまな事象がさらにその開花劇を昇華させるような時刻を狙ってシャッターをきる喜び。
久しぶりに最幸の写真が撮れました。
この感覚、何年ぶりだろう。
雲海、夕日、花崗岩の巨石、アセビの新芽、緑を取り戻した杉、ビャクシン、枯れ果てた古木、そしてミツバツツジ。
すべてが完璧でした。もう二度と出会えることはない僕にとっての理想の楽園が、高山植物の花より儚い短さであの数分間だけ確かに広がっていました。
屋久島の山岳はあちこちに楽園と思える景色が点在してます。
どうぞ、あなただけの楽園を探しにお越しください!
外国からの観光客が多い最近の屋久島。日本人のみならず人類共通の美が内包されているこの島の風景に、異国の歌を合わせて儚さを映像化してみたのでぜひご覧ください。
追伸、今年はシャクナゲの花芽がとても多いです。この原稿を書いている今はシャクナゲの開花がピークを迎えてます。ただいまメンバーの松田が山にこもってシャクナゲを撮影しながら執筆中なので、6月の投稿をお楽しみに!
では、またっ!