向井晶子さん/画家
屋久島の自然と共鳴する“画家”
安房集落を過ぎ山手側に続く農道の途中、小さな赤い花が咲き誇っている。その奥の緑に囲まれた一軒家に“画家向井晶子さん”の自宅兼アトリエはある。
向井さんは、兵庫県明石市出身。屋久島へ移住する前は、東京でデザイン関係の仕事をしていた。その頃は趣味で絵を描いていたというが、次第にもっと絵が描きたくなり、会社を退社。2008年に屋久島へ移住した。
島の自然からインスピレーションを受け、その作品は屋久島サングリアパッション(本坊酒造)のパッケージに使用されるなど、これまで100作品ほどを制作している。
「いろんな命の“源”を描きたい」
そう語る向井さんの作品は、鮮やかな色彩と大胆な構図が印象的だ。作品の前に立つと、まるで自分もその一部になったかのように絵の世界観に吸い込まれる。
「作品と向き合うと、静かな場所へと潜っていく感覚になります。深く潜っていくにつれ“全ての命が繋がっているんだなぁ”と感じるんです」
向井さんの作品は、油絵や水彩画はもちろん、赤土染めの手ぬぐいや、島で採れた砂鉄の上に絵を描いたものなど、自然の循環の一部になれるようなものもある。
これからは、島外での個展も積極的に取り組んでいきたいと言う向井さん。屋久島の自然を描くにつれ、いろいろな境界線がなくなっていく感覚になり、全く絵が描けなくなった時期があったという。
「命は全部一緒やのに、葉っぱの形とかどうやって描けばいいんやろ。自然はそこにあるだけで綺麗だし、わたしが描く意味ってあるのかな?」
必要なものはすでに全て与えられているのに、これ以上何を望めばいいのかと強烈な思いを抱えて日々を過ごした。だが次第に、「肉体を持って生まれてきた以上、この世界でわたしの身体を使うことでしかできないことがあるかもしれない」と、再び創作活動を始めることにしたのだという。
周りを鬱蒼とした木々に囲まれたアトリエで、「どんどん自分が無くなった方がいい絵が描けるんです」、そう語る向井さんの柔らかい笑顔は、画家だとか人間だとかの境界線がなくなり、大きなキャンバスに描かれた島の自然の中に溶け込んでいた。
向井晶子
住所 | 鹿児島県熊毛郡屋久島町安房 |
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ホームページ | https://www.facebook.com/shokomumu |