川﨑技花さん/アニメーション作家
島の自宅スタジオで制作したアニメーション映画が、コンクールで数々の受賞
屋久島在住のアニメーション作家、川﨑技花(あやか)さんにとって、2020年は飛躍の年となった。
出産を描いたオムニバス映画「Birth」シリーズの第3弾「Birth-めぐるいのち-」の1編「私なり、母親の作り方」を監督。昨年9月に開催された「あいち国際女性映画祭」のアニメーション部門と今年1月に開催された「石垣島・湘南国際ドキュメンタリー映画祭」では、川﨑さんの作品単体で、11月に開催された「福井映画祭」のアニメーション部門では、オムニバス作品としてグランプリに当たる観客賞を受賞しており、75回の歴史を誇る「毎日映画コンクール」のアニメーション映画賞・大藤信郎賞にもノミネートされる快挙を達成した。
川﨑さんの作品は、母の存在を知らないまま育った少女が、母親のカケラを拾い集めながら、母親になっていく自伝的ストーリーの手描きアニメーション。屋久島の自宅兼スタジオで制作撮影されており、声の出演も自らが行なっている。
【島に居ながらにして、できることはたくさんある】
広告アニメーションを中心に活躍する川﨑さんのキャリアのスタートは、屋久島だった。つれあいのふるさとである屋久島での出産を経て、ようやく子育てに慣れてきた頃、試行錯誤しながらインターネットでの営業を開始。
美術大学の卒業制作で手がけた3分38秒の作品「Precious place 〜大切な場所〜」が国内外で高い評価を受けたほかは、会社に所属した経験もなかったため、アニメーション作家としては手さぐり状態。
手書きアニメーションやコマ撮りアニメーション、モーショングラフィックスなど、要望に応じて夢中で依頼をこなしているうちに、ようやく仕事が安定して舞い込むようになった。
打ち合わせのほとんどはリモート。屋久島にスタジオを構えていることに、デメリットを感じることはないという。
【「伝えたいことがある」それが、アニメーション作家として独り立ちしようと思った動機】
数多くの広告を手がけながら、「作家」としての原点もおろそかにしてはいない。
2017年に手がけた「森の中で」は、屋久島の苔の森で切り絵の少女が動く自主制作作品。苔の森の柔らかさと清涼な空気が、コマ撮りの少女から伝わってくる。次の自主制作アニメの準備も着々。今年から、テレビ東京系列の赤ちゃん向け番組「シナぷしゅ」でクレジット入りのコーナー「ここだよ〜」も担当することとなった。
島暮らしの新たな可能性を乗せて、川﨑さんの作品は世界中に広がっていく。
(取材:一湊珈琲編集室 高田みかこ)